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SWITCHインタビュー達人達 湊かなえ X 劇団四季 佐野正幸 オペラ座の怪人、浅利慶太の教え

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佐野正幸

オペラ座の怪人

佐野:1988年の4月29日が初演なんですよ。当時の天皇誕生日。初日の舞台にアンサンブルで立ってるんです。きょうね、ちょっといいものをお持ちしました。33年前にちなんで、台本なんですけど。それまでに検討台本が何冊もあったんですね。翻訳ものですので、歌詞が当てはまらないとどんどん変わっていく。これは割と初日に一番近い台本。
湊:書き込んでらっしゃいますね

佐野:鮮明に覚えてますね。まず一番最初、8月8日。楽屋のミラーの後ろで歌い始めますよね怪人は。そこにスタンバイするのに階段が4段ぐらいあるんですけど、上がる時震えてました
湊:そうなんですか!ずっと舞台に立たれてきても
佐野:今でもありますよやっぱり。階段を毎日上がる時は。天国へ上る階段もあれば、死刑台に昇る日もありますね。初日の舞台終わって、最後消えてほっとしたのか何かわかりませんが、いきなり涙が出てきまして。なんの涙かわかりませんけど未だに

湊:幸せな涙ですよね、それを流せたということは
佐野:もちろんそうですね。

仮面の話

湊:怪人にとって、仮面はどのような意味を持つと、佐野さんはお考えですか?

佐野:怪人というのは、実は頭もいい。作曲家でもあるし発明家でもあると言ってますから。ただ単純に半分だけが違う。そこが自分自身認めたくない。絶対に認めたくないところを隠すための仮面だと思うんです。それは真実を隠す仮面でもあるんですけどね。唯一の欠点であると自分で思い込んでいるので、絶対に毎公演意識してますね。

湊:常に傷を意識して、メイクが終わったあと仮面を付けるってどんなお気持ちでつけられるんですか

佐野:ある意味そこがスイッチかもしれませんね。/あまり難しいことは考えずに、ピュアな心を突き止めるようにと言われたんです。ピュアであればあるほどの狂気。純粋な気持ちを持つあまり、愛しすぎて危害を加えてしまう。ピュアな心を毎回持つように心がけていますよね

湊:ピュアな狂気と、底深く抱えている闇があるじゃないですか、怪人には。その闇を演じているためにされていることって何かありますか?

佐野:相当なマザーコンプレックスだと思ってるんですよ。生まれながらにして、母親からも鍛え抜かれて。マザーコンプレックスを突き詰めたら、闇を感じるという考え方かなっていうのもありますね

湊:新しい解釈

浅利慶太の教え「見て捨てて語れ」

佐野:今ここに居て、捨てるっていうのは、れ稽古段階ではどんな気持ちになるのかを綿密に台本に書くんですよ。劇団四季では感情の変化を「折れ」って言うんです。セリフのところに鍵を書くんです。ここで気持ちが変化する。怒る、喜ぶ、どのように驚くかを書く。全部書き込んで自分の中に入れて、舞台に立ったらそれを全部捨てる。そして語る。ミュージカルなら歌う。簡単なことのようで一番難しい

湊:書いたものを覚えるのではなく、捨てるんですねえ
佐野:永遠に課題だと思うんですね。少しでも近づくことができたらいい舞台になる。劇団四季は作品に奉仕するという意識なんです。自分を出すのではなく。

湊かなえ

イヤミスの女王

湊:サイン会に来てくださった、20代ぐらいの女性の方が「自分に嫉妬をする気持ち、妬む気持ちのあることがすごく嫌で、自分のことが嫌いだったんですけど、湊さんの作品を読んで、こんなふうに思うのは自分だけじゃなかったんだと安心しました」言ってくださったのがすごく印象的で。自分の内面と向き合うために読書をしてくれてるんだなと。

佐野:イヤミスの女王と呼ばれていることにはどうお感じですか

湊:できれば一番望ましい形は、本にカバーのイラストもなく、もしかしたらタイトルもいらないのかもしれない。あらすじも書いてなく、まっさらな気持ちで物語を本当に1ページ1ページが予想もつかない、新しい世界で読めるのが一番読書の幸せだと思うんですけど。イヤミスっていうのはもう結末まで嫌な気分になりますよと。でも逆に救いのない話を読んでみたいとか、そういうことについて考えてみたい人が手に取るには、その人が求めているダイレクトに手が届く言葉かなと思う

佐野:オペラ座の怪人も終わったあとの余白がとってもある。共通してますね

湊:最後はどうなったかを読んだ方が決めていただきたいと思って。自分でこの人たちがもっと幸せになって欲しいと思ったら、救いも用意できるし自分だったらこうするなと思ったところで閉じていただくと、より豊かな読書の時間であったり、読み続けた作品がより立体的なものになってその方の中に残るのかなと思って。パシッと決めつけられる言葉があると、その時はスッキリした、わかったと思って閉じる。朝になって物語を思い出してもらえるかというと、そうではない。心の中にとどめて、そこに思いを馳せてくれるような気がして余白を残すような終わりにしています

佐野:ページ戻しますもんね、読んだあとに
湊:ありがとうございます