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サワコの朝 湊かなえ デビュー10周年、告白、200文字の即興小説。

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デビュー10周年

湊:普通の小説が20冊と、シナリオが1冊、エッセイ集が上下巻で2冊。
阿川:単純計算しても、年に2冊から3冊出してらっしゃる。
湊:頑張りすぎました(笑)

映像化された作品

※2017.4現在

告白(映画:2010)
境遇(ドラマ:2011)
贖罪、高校入試(ドラマ:2012)北のカナリアたち(映画:同年)
夜行観覧車、花の鎖(ドラマ:2013)
白ゆき姫殺人事件(映画:2014)Nのために(ドラマ:同年)
ムーンストーン、望郷、往復書簡、山女日記(ドラマ:2016)
少女(映画:2016)
リバース(ドラマ:2017)

阿川:「北のカナリアたち」は原作のタイトル違いますけど、吉永小百合さんから「是非映画化したい」オファーがきたと聞いてますが
湊:往復書簡という小説を読んでくださって
阿川:映像化って嬉しいもんですか?
湊:そうですね。普段なかなか本を読む機会が少ない方が、ドラマを見て続きが気になるとか、どんな役者さんがどんな役をするのだろうと本を手に取って下さるので
阿川:あっそうか、逆に本を手に取ってくれることがある。有名な役者さんに会うって、もう楽しみ
湊:もう、それがいちばん(笑)有名な役者さんに会わせてもらえるのは、小説書いたご褒美だなと。

記憶の中で今もきらめく曲

ポルノグラフィティ/アポロ

因島の同郷で。同じ高校(県立因島高校)で、私が3年の時、ポルノグラフィティは1年生。学祭ですごく上手な子達がいるよって、見に行ったらすごいなあって。因島出身でもこんなにこんなになれるんだ、地方に住んでるからって関係ない。

小説を書き始めたきっかけ

いちにち

阿川:物理的には夜中型だって伺ってますけど
湊:はい。夜大体10時ぐらいから、忙しい時は4時まで書いてたんですけど最近3時を過ぎるとしんどくなってきたので、2時3時には寝るように。
阿川:睡眠時間は1日何時間とってる?
湊:ええと、まず3時から6時まで寝て起きて、子供を送り出して8時からまた寝て。ごはんはおかずを何品もというよりは一品大皿にドーン。「今日はハンバーグ祭りだ!」楽しい(笑)「ギョーザパーティーだ!」自分一人だったら食べなくていい、栄養ドリンクだけ飲んでたらいいやと思うけど、子供にはそういうわけにいかないので、たとえ一品でもちゃんと作って。
阿川:主婦やめたくなったりしなかったですか?
湊:そこを切り離してしまうと小説も書けなくなると思うので、一番が家庭で二番が小説なので。小説を書くことによって家族に迷惑をかけるのならもう明日でいいっていうくらいの優先順位を決めていた。

きっかけは脚本

湊:2000年に結婚して、27歳ぐらいだったと思うんですけど
阿川:淡路島の人
湊:そう。たぶん島の生活に慣れてるので、島が不便とか思わない。翌年出産もしたけど、なんか退屈になって。時間がたくさんあったのかな。自分はホントによく寝る子で、寝たら朝まで寝るし、8時9時から暇になっちゃう。
阿川:最初は脚本を書こうと
湊:そうです。頭の中がいつも映像なので、セリフとト書きで書けたらいいので脚本を書いて送ってみようと思って、半年後に受賞した。その時は佳作だったんですけど。ホントに私事ですが、ここ(TBS)の。淡路島から出てきて、ここで授賞式があり、食事会があったんですが、ほかの受賞者の方々は作品について「ミステリーに興味がありますか」とか聞かれてるのに、私は「東京土産何買って帰るの?」とか、作品のことじゃないぞ!と。「私も仕事の話がしたいです」と言ったら、「「脚本というのは、完成図じゃなくて設計図。それからみんなで作っていくものなので現場で直しもしないとならないし、そんな時に呼んだらすぐ来てくれる人のほうが新人は特に重宝されるので、地方に住んでて脚本家になるのは難しいね」と言われて 
阿川:暗になれないと言われて。なんちゅう人が言ったんですか(笑)ドラマ制作部?
湊:ご勘弁...(笑)
阿川:覚えてるんでしょ?あいつヤなやつだ、って
湊:でもその方がきちんと言ってくださったので、ああそうかなるほど、地方は難しいんだなと。でもこんなネットとかも使える時代に、東京に住んでないとできない仕事もあるのかと。
阿川:腹が立ったでしょ
湊:腹が立ったというか、このままじゃ引き下がれないぞと。映像化できないものを書いてやるぞと思ったんです。
阿川:一種、リベンジ?
湊:そうですね。「3行以上のセリフにならないように気をつけましょう」だったので3行どころか原稿用紙80枚分しゃべり続けてやろうと思って書いたのが「告白」第一章「聖職者」だったんですけど。すごいいい映画撮っていただけて(笑)  

「告白」どう作ったか

一つの言葉から想像を広げる

新聞に挟まってる広告の裏にミステリーに関する単語をどんどん書いてって。「シンジケート?シンジケートってなんやねん」て思いながらずーっと書いていって、紙がいっぱいになったところで一回離して。そこからその紙をパッと見て、どれに一番最初目に留まるか。すると「復讐」って言葉と目が合ったんです。復讐の話を書こうと思って。
誰が誰に何で復讐をするのか。先生が生徒に復讐をする話を書こう。何をされたら復讐なのか。復讐相手よりもさらに小さきものが傷つけられた時に、復讐をするんじゃないか。中学生の男の子に対する復讐ってなんだろう。彼らは見えないところで痛めつけられるよりもみんなの前でさらし者になることが一番恥ずかしくて傷つくんじゃないか。
...う~ん、意地悪なんでしょうね。相手が何で一番ダメージを受けるか考えるのってなんかワクワクするじゃないですか。

阿川:しないよ

追い詰めるのって何を言ったらいいんだろうとか、逆に何を言ったら喜ばせられるだろうか考えるのが好きで。
(子供の頃は)あんまり作文とか好きじゃなかった。想像は好きで。目の前で起きていることをいろいろ想像しながら。今でも行列が出来るラーメン店に並んでも全く苦じゃない。前の人たちの会話を聞きながらその人たちのことを考えたり。付き合って何ヶ月目かな、こういう会話はまだ3ヶ月ぐらいかな、もしかしたら男の子の方は付き合いたくても、女の子はただここのラーメンを食べたかっただけなんじゃないかな、とか。頑張れよ男子、と思いながら(笑)
  
編集の人にキーワード3つぐらい出してもらって。

湊かなえ作「サワコの朝

阿川:「サワコの朝」ってテーマで書くとしたら。書けますかね?
湊:締切がまだまだ先だったら、一旦家に帰りますが(笑)今書かないといけない

この道はトンネルではなく、ほら穴なのかもしれない。
もしくは
掘るのをあきらめてしまったトンネル。

サワコの朝は、階下からの呼び声で始まる。
時計も確認できないほど暗い時間を
朝と呼べるのかどうかは 
わからないけれど。
「誰か。誰か来てちょうだい。お願い。朝なのよ」
目だけを動かし、
隣の塊に目をやる。
聞こえているんでしょ。
あんたの大事なお母ちゃんが 
呼んでるよ。

介護をテーマにした話を書いて欲しいというリクエストを数人から頂きまして
悩んだり行き詰まったりしてるんだなと。
子育ては光が先に見えてるんだから、あの光に到着するまでがんばろうと思えるけど
介護って光が見えない分どこに向かっているかもわからないので
こういう書き出しにしまして。
サワコは夫の母の介護をしているけれど、義母は4時か5時に起きて
「おねがい、お願い、来て」と呼ぶけれど
夫は聞こえているのに聞こえないふりをし、置いていって
結局お世話をするのはサワコなんです。サワコの明けない朝が始まる。
夫殺しちゃうかも。本の中では夫を殺してもいいんですよ。
喪主の挨拶はいいことを言わなきゃいけないので、言葉を並べてるうちに
いい人だったんじゃん、と。
仕事から何も分からずに帰ってきた夫に「あぁ、おかえり~」と
言ってあげられるんじゃないか。本ってそういう役割がある。

続き書いて欲しいな。是非一冊の本にして。

今心に響く曲はSou「さかさシンドローム