はじめに
コピーライター時代に、園芸がいかにすごいかってことに出会って。だからそのまんま時代物に入っていった。やっぱり、江戸時代の中期以降の園芸、草花を作る方ですね。育種っていうんですね、間違いなく世界一のレベル。いままた再現できへん色とかあるんです、植物によっては。
あの、もう、シワが増えようがシミができようが、好奇心だけはね、こどもんときのまんま。
いま、だから江戸時代舞台にだけじゃなくって、明治大正昭和平成まで行きましたけど、それもやっぱ興味を持った人の人生にアプローチしたくて、入っていくことがほとんどですね。その人の人生を物語ることによって、すごく大きな歴史の流れにも触れることになったり。ああ、ここでこんなことが起きたばっかりにって思うことが多いですね。ひたすら想像してるというか。たぶんわたしにとったら、両方現実なのかもしれないですねえ。
マイケル(24歳)おばあさん猫
人間の年齢で100歳超
ソファーにいて、時々お腹すいたとか、のどかわいたとかで、中断するんですよ。私の仕事を(笑)で、止められへん時が多いんですね。
わたしはほんまにエンジンかかるの遅くて、いざ走り出したら今度止めれなくて。そこをプツプツ切りに来る。上がってきてキーボードをおしりで踏む。vvvvvって。勝手にいいの書いてくれるんならいいんですけど、危ないことが幾度あったことやら。
朝まで仕事した時もずっとそばにいる。そんなくっついてくる子やなかったんです。ひとりで虫取ったりして遊ぶ子やったんですけど、歳と共にそばにいることが増えましたね。猫との距離感が好きなんです。あくまでも水平線上にいるというか。
散歩をしていて、偶然、寄ったこともないペットショップに、ぷらっと入ったんですよ。床にケージが、割とぞんざいに置かれていて、そこに子猫が一匹。赤札、セールになってたんですよ。きょうだいで売られてたんだけど、一匹売れ残ってたのがマイケルだったんです。どうしてもあの子気になるなって、戻って、連れて帰る車ん中からやんちゃだったんですよ。
行間で眠る
スースー、くーくー。
彼女の寝息や寝言を聞きながら、小説を書くのが私の日常だ。
江戸の長屋で口喧嘩をしたり、明治の洋館で踊ったり。あるいは、架空の野山を駆ける。
想像に想像を継いで書いているのだが、その日暮しの若者に、文明開化の婦人。名も無き木々も、そこにしかと存在している。私は息を殺して観察し、写実するのみだ。
やがて、一行一行が、色と、音と、匂いを伴って立ち上り、物語が動き出す。書き手だけが味わうことのできる、世界の始まりの瞬間なのだ。
だから執筆前は気が重くて、もう脱走してしまおうかと思いながら、結局は、パソコンに向かう。(中略)彼女は、そんな書斎のソファで暮らしている。執筆の役には立たない。むしろ邪魔をするのが生業....
小説と猫、この厄介な難物を、わたしは愛してやまないのである。
【猫も杓子も】神林長平とビタニャ「それでも猫になりたい」 - 別館.net.amigo