2023.10.23放送
実家ではずっと飼ってて、老後の楽しみかなと思ってたら出会っちゃった...
馴れ初め
我が家の愛猫トムの来歴は、あまり一般的ではないかもしれないかもしれない。
拙著「旅猫リポート」が映画化された際、主人公猫のナナ役を演じてくれたのが、当時タレント猫だったトムであった。
初めて会ったのは、猫オーディションの日である。候補の猫たちが大集合した中、プロデューサーは「スタントが白猫や、茶トラで2匹体勢で撮りたい」と主張し、猫トレーナーの北村さんは「この映画に向いた性格の子を1匹で臨んだ方がいい」と主張し、いわばにらみ合いの状態の時に、私が訪れた。
プロがこの子でというなら、異論はない。
私の鶴の一声で、トムが決定した次第である。
私は撮影期間中、北村トレーナーのかなり善き助手であったと思う。必ず用意してもらった猫の待機部屋で、トムに付き添っていたのも、北村師匠と私である。北村師匠にお伺いを立てつつ遊んでやり、距離はどんどん縮まった。
そうして1年以上が過ぎた頃、ふと気づいた。
私はもう、トムに会いに来るのをやめることができない。だとすると、これから永遠に通い続けて、いつか北村さんから「トム君亡くなっちゃったんですよう」と聞かされるのだ。
私は北村さんに切り出した。
「トムを見取りたいので私にください」
こうしてトムは、我が家の猫になった。