角野栄子
親友について
話が合うし、子どもの本の話もできるし。あたし”親友”という言葉が嫌いなの。なんかベタベタした女学校時代を思い出すんですよ。親友になって、とか、あたしたち親友なの、とか。
横山さんは本当に子どもと本との間を取り持つのが好きなんだと分かるのね。
バラが綺麗な頃。山口宇部空港から。「舞台装置みたいな」関門海峡を眺めつつ会いに行く。本屋さんで語らって、巌流島へ。
つながっている感じがする、いろんなところに。こんな小さい海だけど。人の心に見える風景、そんなのが書きたい。文章で。だから物語は絵と似ている。
手に取った本
子ども時代に感じた「死への恐怖」
角野:子ども時代は何もなかったから、想像力がおもちゃだったので、それで家で物語考えたり。蚊帳を吊るでしょ。蚊がいたからね、うちは江戸川。するとそこが海になるわけ。子供たちはそこで泳ぐ。泳いでるつもりになるわけ。蚊帳の中で。違う世界になるわけね。昔がいいみたいだけどさ。
いま、魔法が少なくなっていると、あたしは思うのね。昔は暗闇に何か不思議があったのに、今はどんどん明るくなるし。なんていうかしら、おびえたり探ったりできない。だけどそれが今、本にあると思っている。
横山:たぶん、子ども時代に死というものの恐怖を、口で言うと理屈っぽいと思われるかもしれないけど、感じとして、知っているんじゃないか。自分が死ぬんじゃないかという恐怖が、子ども時代にずっとあった。ホントくだらないけど、朝の光が戸の間からサーっと入って来て、ほこりが見える。いつかほこりが上がっていくけど落ちた時に、私は死ぬんじゃないか。おびえてたの。だから朝の光が見えてくると、布団をかぶって、見ない。
角野:でもそれが子どもじゃない?すごく素晴らしいと思う。くだらないことじゃないと思う(笑)そういうものを見て、見えない世界が想像できる。すばらしいな。
横山:だからこそ本を読んで、読んでもらって生きていくことを積み重ねる。
感想
子どもの頃、眠る、目を閉じるのが怖かった。
下関なら横山さんしかいないだろうと思った。ラジオに登場されると必ず聴く。番組では清末小学校。コロナ禍で3年近く選書会がなかったが、以前勤めていた各小学校の選書会ではお世話になりました。なかなか本が決まらない、字が苦手で困ってる子。逆にあれもこれも読みたくて、制限時間内に決まらない子。誰にもとられないように大事そうに抱えて隅っこで読みふける子...子どもたちには、おばけのアッチが図書室で待っている。学校は、できるだけコロナ以前の姿に戻ろうとしている。もう現場に戻ることはない。