辻惟雄(つじのぶお)
伊藤若冲「象と鯨図屏風」
六曲一双の墨で描いた作品。
【美検】六曲一双って何?屏風を数える曲・隻・双の解説 : アートの定理
あれこれ考えましたけれども、やはり新型コロナが人々を脅かしているこのご時世で、何か一つ「なぐさめ」「なごみ」になるような。象と鯨。若冲が82歳。私より年下なんです(※2020年6月で88歳)当時にしてみりゃ、今だったらもう100歳近い年齢でしょうね。そういう年齢で描いた、あんまり力が入ってないっていうか。その年ですから当然ですけど。その割には非常にスケールの大きな。何よりもひきつけられるのは、和やかな、象と鯨がお互いに挨拶してるようなですね、向かい合いが好きなんですけれども。陸の王者と海の王者。王者と言いましても非常に和やかな雰囲気で挨拶している、エールを送り合っている感じですね。ほっとするような絵ですね。こういう非常事態には、象のような穏やかな気持ちになっていただきたいと...大らかっていうかどうかわからないけど、のんびりしていることは間違いないね、こりゃ。
原田マハ
安藤忠雄
モネ「睡蓮」
モネっていうのは光を求めた作家なんですね。見ていただいて、難しい社会の中で、自分で希望を見出すのは、希望というのは光ですから。光に向かい自分が生きていく姿を見出せるのではないかと思って選びました※サンソン聴いた後のせいか「希望という名の光」が脳内再生。
モネの光の空間に対して、光を求めることに対して、私達も光で応えたいと、自然光を設置しました。モネにとっても我々にとっても光というものの面白さが見えるのではないか。建築というものはやっぱり、太陽光線の中で見るものですから。モネの睡蓮を設置するなら自然光がいいだろうと。
自然とともに生きていく。人間とともに生きていく。地球の中で生きていく。いろいろ考えさせられるのではないか。世界の人たちが生きることについて深く考えたのは、非常に珍しい。今まで地球の人たちが経済力を蓄えるために頑張ってきましたけども、意外とそれよりも、自分らしい生活をここでやればいいのではないか。私には私なりの生活があるだろうし、それぞれの人たちなりの生活がある。そしてモネがひたすら睡蓮を描いたように。彼がひたすら生涯追いかけたように、自分のありようは自分で決める。自分の人生の楽しさは自分で決めるというようにすればいい。今回非常にゆっくりした時間を持てて、ある面で非常に良かったかなあと。
横尾忠則
ピカソ「ゲルニカ」
ニューヨークでこの絵と出会い、45歳で画家に転身。
ただ単なるゲルニカを告発した作品ではないと思うんですよね。現代のコロナ時代に我々生きているわけですけども、それとどこか深く結びついている。誰が見ても無意識のうちに今のコロナ禍が伝わってくると思うし。毎回新しい発見があったり。その時々によって違って見えてくる。普遍的なものを持っていると。そこにはやっぱり人間の死とか生、命ですよね、そういったものが全部ここに描かれている。
未完の部分を見る側の人間が入口にして、また新しい時代が来る、と違う解釈もできる。そういう意味でね、すごい遺産としての作品を残してくれたなと。アーティストは、未来にこれから起こるかもわからない予感的なものをキャッチする能力は、美術の中にあると思うんですよね。今やっている仕事の中に今後の未来が描かれていると考えていいんじゃないか。