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サワコの朝 角田光代 転機は空中庭園 紫式部の比喩

直木賞選考委員

2020年~

阿川 選考会に行く前に、候補作を5冊ですか
角田 5冊でしたね、今回は
阿川 読まなきゃいけないってのも大変
角田 やっぱり好きで読むのと違って、ちゃんと読まないと
阿川 この作品はどこがよくてどこが欠けているかみたいなことを
角田 そうですね。仕事的に読むのがちょっと辛いですね
阿川 年2回ですもんね
角田 そうですよね....
阿川 プレッシャーをかける(笑)

角田ワールドの魅力

表と裏

阿川 角田さんが描く女性って、表と裏があるんですよ。たとえば私が書くときに、しばらく進んでって「こんなこと言わせると彼女らしくない」て指摘されることがあるんですよ。「そうか、最初の頃こんな感じだったから、彼女らしくないと統一感がなくなっちゃうな」って思うことはあるんですけども。角田さんの小説は人間一人に二面性みたいなものまでを、ちゃんと相互なく書けるところがすごいなって

角田 あぁ...

阿川 いけなかった?
角田 ありがとうございます
阿川 それがなかなかできないんですよ。前も伺ったけれども女子校出身でしょ?女の子ばっかりの中学高校出てると、自分以外の人たちの表裏みたいなのを強烈に感じたり

角田 いや、そうでもないですよね。私が特別あるんですよ
阿川 私自身が
角田 はい。なんか非常にネガティブで、なにかすごく悪いもの、悪いものに落とすところが多分あって、それを自覚していて、だから多分書いちゃうと思います

記憶の中で今もきらめく曲

多摩蘭坂/RCサクセション

19歳の時に友達からチケットをもらって、日比谷野外音楽堂にライブを見に行って。ライブを見た瞬間に「これだ!!」この人みたいな表現者になりたいと思ったんですよね。たとえばお月様って誰でも知ってる言葉ですけれども、それをあの声で歌った時に、私たちが知ってる月、思い浮かべる月の概念を壊して、新しい景色を見せる。そういう小説をわたしもいつか書きたいって思うようになったんですね。素晴らしいですよね、今聴いてもね。19歳、小説を書き始めた頃なんですね


RCサクセション 多摩蘭坂 at 武道館 1981 (曲前が首都圏版より数秒長い地方版)

坂の途中の家 (朝日文庫)

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  • 作者:角田光代
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: 文庫
連続ドラマW 坂の途中の家 DVD-BOX

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  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: DVD

3月生まれの記憶

阿川 ちょうど言葉に敏感になってる時。最初にインタビューした時にね「保育園の時3月生まれだからどうしても同学年の子達よりもいろんなことができなくて、すごく苦しんで」その記憶は
角田 まだありますね。まだ残ってるし、いまだに3月生まれも4月生まれも、52歳も50歳もないぐらいの年齢になったのに、あの年齢みんなができることが、わたしだけできないという気持ちがまだ残ってるんですね。たとえば「はさみで丸を切りましょう」とかもできなかったし、あとトイレに行きたいって言えなくて一人だけいつも漏らしてて。替えのパンツが保育園にあって「これはあなたのために用意したようなものだね」と言われて

阿川 粗相するのは私だけっていう。だって怪我をして血を流しても先生に言えなかった
角田 そうなんですよ。自分の状況を説明できなかったりして、先生のいる部屋の前に無言でずっと立っている、すごく辛かったのはまだ覚えてますね。喋る友達もいなくて、休み時間とか親が迎えに来る間に話す人も友達もいないので、とりあえず本を開いてれば何かやることあるだろなと思ってもらえる

阿川 そこから本に
角田 そうですね。面白いと思って

転機

空中庭園

デビュー後しばらくは評価されず、けなされてた。要約すると「この作者は馬鹿だ」多分小説というものを分かってない、幼稚であるということだったと思います、最低にどよんとしたときは、3ヶ月書くのをやめました。「空中庭園」が転機に。
ずっとおじいちゃんの編集者にあなたの書くものは暗い、暗いと言われてきたんですね「厭世的でよくない」と。世の中に絶望している。
おじいちゃんの編集者が言ってたことは、そのあとに「希望を書かないとダメだよ。世の中のすべての小説は希望が書かれている。希望を書こうとしないとダメだよ」言われてて、それが分かんなかったんですね。おじいちゃんだからそういうんだ、あたしの世代に理解できない、ずっとそう思ってたんだけど「空中庭園」で久世光彦さんが男性誌に書評を書いてくださったのを読んだら「ある家族がいました。幸せそうに見えるけど実はこんなに秘密が。全然いい家族じゃなかった。だからなんだって思ってしまう」10年以上言われ続けてきたことがバチーンとわかったんですよね。わかった、おじいちゃん分かった!!(笑)余りにもわかったので日記に「自分が世の中をどんなに信じられなくても、汚いのに目がいってしまっても、綺麗なものを書くことができる」世の中が綺麗かもしれないって考え直して、次の小説(対岸の彼女)は絶望や失望で終わるのをやめようと思いましたね。

空中庭園 (文春文庫)

空中庭園 (文春文庫)

源氏物語 紫式部の比喩

女三宮

千年たっても色褪せない比喩。たとえば光源氏の奥さん、女三宮と柏木は浮気をします。関係を持ってしまう。女三宮は怖くて怖くて、いつ源氏にバレるか怖くてしょうがない時に「空が睨んでる気がする」って比喩が原文にあるんですね。すごいなと思いますね、そういうたとえ。
紫式部は、この女性をすごい嫌いだったんだろうな、みたいな。筆がすごい厳しいんですよ。こき下ろしたあとにちょっとフォローしたりするんですね。それがまたひどい。女性に対して非常に意見や観察眼が有り、意地悪な人。

5年間小説を書いてないので、いざ書こうと思ってもわからない。起承転結(笑)と言って。仕事は9時から5時までと決めていて、お付き合いしてた方のサイクルと合ってることに気づいて、ずっとそれだけが残ってる。50歳すぎたら朝だけフレックス。

ラストはフラワーカンパニーズ「いましか」

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