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人生案内メモ、文字起こし、感想。

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サワコの朝 辰巳芳子 母の話。

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しいたけスープ

蒸すことが大事

辰巳 干したしいたけと昆布ですね。神経を使う方に特にオススメする。しいたけの薬効というものがあります。
阿川 椎茸の香りがふわっとします。やさしい。
辰巳 するでしょ?これがね、煮てしまうとしいたけの欠点が出てしまう。これはね、蒸してある。しいたけのいいところだけ出てる。
阿川 鍋に直火でじゃなくて、コトコト蒸して。実にシンプル。原木しいたけと、昆布と、梅干し。この3つと、お水だけで。味付けは、ちょっと塩を入れるぐらい。
辰巳 ちょっと入れるだけですから。
阿川 とってもシンプルなんですけど、体が浄化されていく。
辰巳 あのね「こういう味のものを作ろう」なんて思わない。しいたけの命をどのように損なわないでいただけることができるか。直火でもって煮るよりも、ふかしたほうが、しいたけはご機嫌になります。しいたけが喜んでいる。
阿川 しいたけを喜ばせる手立てはどのようにすればいいのかを考える。
辰巳 そう、そういうことですね。

食材はとっても注意深く手に入れるようにしないと、労力が無駄になる。疲れた時は、冷やしておいたほうがたくさん飲める。

素材のいのちを生かす

菜飯

阿川 人と違う独特のオリジナリティを作ろうとか、邪魔なことなんです?
辰巳 いやぁ...何をどのように食べたらいいか、ってことね。もっと根本的に考えなくてはいけない。例えば今だったらね、若くていい菜っ葉がたくさんある。大根の葉っぱでも外側の荒い葉っぱは食べ方がある。真ん中の芯の一番柔らかいところの切り方、葉先は葉先の切り方をしてごまをかけて、ご飯に入れて菜飯(なめし)をいただく。それは随分美味しいし、健康に役に立つ。
阿川 季節と、その時にできたものと、体との関係。
辰巳 そう。それが一番、生きて行きやすい。どうやったら生きて行きやすいかということ。単純なことです。

記憶の中で今もきらめく曲

グレゴリオ聖歌

辰巳 幼稚園のときから聴いてます
阿川 聖心女子大学もいらしてたから
辰巳 幼稚園から聖心。小さい時からそれで育っちゃってるから。聞かなければ変ですねぇ。
阿川 久々ですか、聞いてみましょう。
辰巳 うん、どうぞどうぞ。

母、辰巳浜子

日本料理界のさきがけ

阿川さんの中学時代、手伝いをしながら読んでいた本「娘に伝える私の味」「手しおにかけた私の料理」紹介。

「きょうの料理が伝えてきた昭和のおかず」紹介されたのは厚焼き卵、煮梅。

当時を知る人にとって存在の大きさから、今も伝説の人になっています。...日頃から「あえものは女の仕事であり、秀美である」と言っていた辰巳さん。亡くなる少し前、芳子さんが「あえものについてまとめて書き残してください」とお願いしたら、何もみず、次から次へとレシピを書かれたそうです....

阿川 まず最初に作ったのがふわふわ玉子。ネーミングもいい。普通の炒り卵じゃなくて、油をちょっと入れるとふわふわふわってなるのが、夢のようで。
辰巳 そうね。これはほんとに。だって、家庭ならばこそよね。ひとつの幸せのあり方だと思う。ありがとうございます、嬉しいわ。
阿川 お母様が料理を作ってお出しになるときに「おいしいでしょ」って(笑)
辰巳 そう。あれは面白かった。父が笑って「自分が作ったものをおいしいでしょ、って言ってるよ」(笑)
阿川 「おいしい?」ってお聞きになるんじゃないんですよね
辰巳 うん。おいしいわよ、って言って出す。魔法にかかっちゃいますよ。母は底抜けに明るい人だったから。ほんと、明るかったわよね。

阿川 お母様が料理家として忙しくなられた時には、お嬢様としてお手伝いなさったり、料理に興味をもたれたり。
辰巳 いつでも手伝ってましたね。だけど、私もお料理する人になろうとか、なりたいとかは、これっぽっちも思わないですよ
阿川 それはなんでですか?
辰巳 だってぇ....大きい声じゃ言えないけど、大変ですよ(笑)大変さ加減を身にしみてわかってるから。滅多矢鱈のことでね、お料理する人になりたいなんて言いませんよ。みなさんが教えてくれというから、やってみようかと思うだけで、あんまりそういう意識はないわね。お頼まれするから、義務を果たすわけなんだ(笑)でも食べるってことでね、人様の命をよりよく、生きて行きやすい方向にお向けすることができるっていうのは、ひとつの幸せかもしれませんね。こういう仕事ができるっていうのは。
阿川 何になりたかったのですか
辰巳 私、学問がしたかった。慶應の心理学科に行ったの。純粋に勉強が好きだった。
阿川 ご著書にもありますけど「若い頃は勉強の時間が欲しいのに、料理の時間に取られるのが嫌だった」と思ってらした
辰巳 私割と合理的な事を考えるお料理ね、単純にやらないってことがある。ひとたびやったら科学的に使えるとかそういうことを考えてしまう
阿川 手間は省かないけれども、時間を短縮するための工夫をいろいろなさって
辰巳 どうしてもそうなってしまうわね。
阿川 ネギも端から端まで全部使う
辰巳 ネギを炒めて、味噌状のものを作って瓶に入れて持ってる。小出しにして使う

結核と戦争

阿川 学者になりたいと思ってたのに、19歳の時に結婚なさるんですよね
辰巳 それと、学者になるのを諦めたのではなく、結核になったの。なが~いこと、結核でした。40代まで何もすることができなかった。戦争よ、ね。暗黒の時代でした。同じことは絶対に繰り返されないで欲しいな。幸せなどこれっぽちもありませんよ、戦争は。
阿川 19歳で結婚された方が、三週間後に出征なさって。戦死なさった。
辰巳 一緒にいたのは三週間足らずだった。あの頃若くして死んだ日本の若者、死んでも良くて兵隊に取られた人は一人もいないよ。小さい声で「死にたくない」それを聞いているから、男たちの無念ていうものが骨身にしみているの。それを言うと悲壮なことになっちゃうから、あんまり言わないけれどね、ちゃんとしまってある。ある一定の幸せは維持したいな。米と大豆を守ろうとしてるけど、それはその人たちの無念と無関係じゃない。

大豆100粒運動、300人ぐらいの全国の小学生が大豆の種を蒔いてる。米を作るのは大変だけど、大豆は、相当に貧弱な土でも生えてくる。
わざわざ困難に生きる必要はありませんからね。

いま心に響く曲はメンデルスゾーン「歌の翼に」


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