本心を明かさない、本人にもわからない。
小室等が「帰れない二人」を弾き語りしたり(←当時20代だった陽水も星勝も、この曲をA面に希望していたが、プロデューサーの一存でB面に)、最後まで見ごたえがある深読みの中から。
なぜか上海(1979)
盧溝橋事件と上海事変
高橋 上海っていうのは中国の玄関。租界(外国人居留地)独立国家。
小室 アジール(聖域)かもしれないね。中国のアンタッチャブルな
高橋 俺今気がついたんだけど「どんな未来も楽しんでおくれ」日本語おかしいよね。疑問符になるはずなのにさ
山本「はしからはしのたもと お嬢さんたち」アートでいうコラージュ。
高橋 おかしいでしょ
朝吹「転がるほどに丸いお月さん達」こういうところが面白い。現代詩だと思う。
高橋 お嬢さんとおにいさん。上海にわたっている人たちのことを言ってるんだろうけど、ずーっと読んでも意味がよくわかんないんだよね。
そのままもそ、もそ、も、もそっとおいで はしからはしのたもと お嬢さんたち
友達さそ、さそ、さ、さそっておいで涼しい顔のおにいさんたち
ぼくね、お嬢さん達もおにいさん達も、死者じゃないかと思ってるんですね。昭和12年盧溝橋事件が起こって、8月に上海事変。そっから戦争が始まる。たくさんの死者たちを送り出した入口が上海。もひとつこの歌詞で特徴的なもの、吃音だよね。「まそ、まそ、ま、まそっとおいで」全然意味がわからない(笑)言葉を上手く発することができない。だから、ここは一体どこなんだろうと考えると、生きている人間も死んでいる人間も一緒にいられるユートピア、それを上海というふうに言ってる。
こわれたような空からこぼれ落ちたとこが上海
高橋 何?(笑)見ることはできないけど言葉にすることはできる。
山本 井上陽水は生きている区別も死んでいる区別も、実はあまりないのかもしれない
安藤 だんだん私が、この番組に来る前の知っている井上陽水のイメージに近づき始めてる
※「もそ もそ、も、もそっと」のくだり、初めて聞いたときビューティフルサンデーの訳詞思い出した(←すば すば すばらしいサンデー)
ワカンナイ
宮沢賢治問題
小室 とにかく宮澤賢治にたてつくことができるっていうのが、身の程知らずもいいところな感じなわけですけども、陽水さんは一言で言うとハテナマークの人で、とにかく何に対しても「?」って言ってないと気がすまない。だから宮沢賢治のすごい詩に対して「君の言葉は誰にもワカンナイ」って言うんですよね。
君の静かな願いもワカンナイ 望むかたちが決まればつまんない....絶対陽水さんは「雨ニモマケズ」をいいと思ってるし、感動してるからこんなに書けるんだなとも思いましたね
このまま要約したり説明してたりしてない。「南に貧しい子 東に...」北を選んでないところがそういう気楽さもある
高橋 現代詩における宮沢賢治問題。陽水の面白いところは、一旦宮沢賢治を否定する立場になっているんだよね。ワカンナイって。でも否定しきれないところで歌を作ってる。ついでに言うと、宮沢賢治を擁護しつつ、これはやっぱり自分の立場だよね。理解されない。
朝吹 抜かりない(笑)
高橋 宮沢賢治のことを歌いつつ、実は自分のことを歌ってるんじゃないかなあ
深読み曲は他にも「氷の世界」「帰れない二人」「あなたにお金」「リバーサイドホテル」など。
「深読み音楽会 井上陽水」の感想、概ね好評なんだけど、一部に「解釈を押し付けるな」「正解を知ってるのは本人」「(自分の解釈と違うので)トンチンカン」といった感想があって、批評不要論(アーティストと私がいればいい)みたいな主張とダブって見えた。
— 八作🐳㌠ (@brikix) 2019年11月27日
#深読み音楽会 追っかけ再生。いっそご本人呼んできて「いやそこまで考えて作ったわけじゃないんですよ。ワタシにもワカンナイ~」って言って出演者がずっこけるオチでも良かったかも。番組中の解釈を記憶にとどめ「なぜか上海」を聴くと背後に霊がいる気がしませんか?志村後ろ後ろ。
— あみーご長嶋 (@amigonag) 2019年11月27日