室屋義秀
繊細なテクニック
収録日は悪天候のため飛行できず。
乗ってる時の研ぎ澄まされる感覚。ノルアドレナリン(集中や覚醒を促す神経伝達物質)が出てると思う。緊張が高まっているので、その時の内観、認知の動きについて聞きたい。
普通の人なら3秒で失神
室屋:アクロバット専用機は軽自動車より軽い
中野:上杉謙信みたい
室屋:訓練の時から言われるのは「パイロットは3割頭」例えば初期の訓練。操縦しながら足し算とか全然できないです
中野:ということはおそらく、心拍が上がってる感じですか?
室屋:多い時には200近く上がってる。160は超えている状態でキープしている。本気で走ってるぐらいの。フライト中は垂直上昇。手足は自動的に動かないと間に合わない。 逆宙返りとかすると血がうっ血しちゃって。Gがかかって頬とかゆがんでしまう
中野:めまいがする感じと思いますけど
室屋:あんまりトレーニングしないでやると、それこそ三半規管がめまい起こしちゃうと治んなくなっちゃうので。ほんのちょっとしたズレで勝ち負けが決まる。
エアレース本番は結構限界な感じ。10Gかかってしまうし1回の飛行は15分ぐらいが肉体的に限界
中野:機体の軽さといい、自分から翼が生えてる感じ?
室屋:くしゃみするだけで機体が震える。動きがむにゅむにゅってなると、飛行機もむにょむにょってなる。大会に行くと結構叫んでる。喉が枯れるのでゆるめたり。
中野:あぁ思い出した!音刺激はいいんですよ。自分の気持ちを高めるために声を出す。ノルアドレナリン。
視覚に起こる現象
室屋:曲技飛行の演技をバチッとやるのは4分が限界
中野:その4分長く感じませんか?
室屋:きついですね
中野:普通の人が味わわない危険な状態を認知すると思うんですけど、私達コマ落としで認知するんですよ途中を。例えばバンジージャンプも、途中を落としてスローモーションで見える。コマごとに認知されるらしいということがわかった。全部見てしまうと怖いから、レベルを落として精神の安定を保とうとする働きのよう。慣れてくると全部認知できたりするのかな
室屋:世界選手権、チャンピオンシップとか行くと限界点まで行ったりするので、そういう感じは確かにありますね。ちょっと遅れちゃうというか勝手にマイクロブラックアウトと言ってるんですが、0.05秒とか0.01ぐらいの一瞬、その瞬間にぶつかったりする。
中野:へえ~じゃ世界レベルになったらほんとにしっかり認知してないと途中が抜けて
室屋:それが抜けてんだか、力が入んない状態だったり。アドレナリンが出すぎてて、多分感じない。
中野:過緊張(緊張状態が解けない)ぎみ
室屋:多分そこまではいかないと思うんですが。自分の中ではバランスを緩めると保ちきれないのでスイッチが欲しい。
空を飛ぶことに憧れるようになったのは少年の頃。ガンダムの影響かな。大学卒業後はパイロットを目指す。バブル崩壊後の氷河期時代。就職できなくてもしょうがないて雰囲気の中、アクロバットを目の当たりに見て、操縦技術で世界一になろうと決めた。
中野:そこにインセンティブ(意欲向上の刺激)を見出すのは難しい。出来るんだろうかという不安のほうが大きい
室屋:ストイックにならず、楽しみつつ続けるのは意外と得意なんです。
中野:一つの領域で高めることをやってる人はそれが出来ない人のことを多分理解できない。飽きっぽくてやめちゃう人は、興味が他のところに行く。どっちがいいというわけでは、本当はない。ひとつのことを極めようと思ったら、すごく力になる才能。努力できない人は何ができないかというと、脳における報酬、努力の量を比べて、苦しさが際立っちゃうのでやめちゃう。脳で報酬を感じにくいので努力できない。
運のいい人の振る舞い方
2002年、飛行機購入。大会で成績を出しても、費用も時間もかかるのでボロボロになって帰ってくる。訓練してないから。世界を目指すと大変だからもうやめようと。メシ食えないし。そういう状態が3年続き、昔からの仲間と喧嘩に。「逃げてるだけじゃない?」真剣な仲間がいて、支えてくれるスポンサーやいろんな人がいて自分を引っ張り上げてくれた
中野:それも運のいい人の振る舞いかもしれませんね。自分にやってくる善し悪しは、実はみんな一緒。自分が運がいいと思ってる人、悪いと思ってる人とでは振る舞いが違う。悪いと思ってる人は外向性の尺度が低い。外向性というのは、外に目が向き、情報を得ようとする、よりチャレンジしましょうという気持ちが強い。新しい人に出会えて、結果的に良い方向に人が持ってきてくれることが推測される。室屋さんの場合、橋渡ししてくれる人がいっぱいいる。
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