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【感想】オダサクさん、こんにちは~生誕100年 織田作之助と「夫婦善哉」~ 西加奈子 町田康

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「めをとぜんざい」と書いた 赤い大提灯がぶら下がってるのをみると、しみじみと夫婦(めおと)が行く店らしかつた

尾野真千子×森山末来。1955年、映画版のキャストは森繁久彌×淡島千景 40代以下が混同しやすいのはミヤコ蝶々×南部雄二の同名トーク番組。
夫婦善哉」の番宣。なお、作品中に出てくるライスカレー、たこの甘露煮なども興味深くグルメ本としても楽しめますだそうな。

蝶子が隠していた貯金帳をすっかりおろして、難波新地へはまりこんで、二日使いはたして魂の抜けた男のように、とぼとぼ黒門市場の路地裏長屋に帰ってきた。「帰るとこ、よう忘れんかったな」そう言って蝶子は首筋を掴んで突き倒し、肩をたたく時の要領で頭をこつこつ叩いた。「おばはん、何すんねん。無茶しな」

芸者との不倫をしでかし、食べ歩きデートに勤しみ結婚までこぎつけたものの、嫁はんの通帳から金を引き出し使いこんで帰ってきたら、待ち構えた奥方にプロレス技的なものをかけられてまう。柳吉はどうしようもないあほぼんサイテー男B級グルメ男。敢えて芸人をキャスティングしなかったのがミソかも。なぜサトエリがナビゲートしてるかというと、芸者さんの役で出てるから。でも夫婦善哉そのものの引用とグルメ番組のような印象になっちゃって。そやな、もし尾野真千子火野正平が出てなかったらドラマ見てないなたぶん。あ、そうそう「俺は草刈だ」も出とるし。

作之助の両親は河童横丁で魚屋を営んでいた。夫婦善哉のモデルとなったのは2番目の姉、千代と、化粧品問屋の若旦那・山市乕次(やまいち・とらじ)が駆け落ちをした実話に基づく。ふたりは別府に移り住み電気店などを営んだ。乕次は夫婦善哉を読み「ようも書きおったな」と激怒したが、千代は「ほんとうのことだから」と言ったそうな。
作之助自身も21歳の時カフェの女中と恋に落ち同棲、5年後に結婚。夫婦善哉は、自分たちが夫婦として認められようとした時に書かれたものである。

西加奈子

最初に読んだ時は、おぼこかった(←うぶだった)から、奥さんが旦那さんに尽くす話だと思ってた。大人になって読むといろいろと分かってきた。ただの美談じゃなく、蝶子が自分で尽くすことに酔ってる、快感であると。

町田康

表現の自由はすごい。それを認められてないのはピンとこない。
「これを出したらいかん」というのは実感できないですけどすごい虚無感だと思う。
「生きてるな」と言われてるみたいな。
国家による規制は今はないかもしれないけど
「ちょっとしんどいからやめとこ」「嫌われるから」という自己規制はあると思う。
表現、小説や演劇をやるときはそれと闘っていかないといけない。
なんで放浪してしまうかを考えたら、共感してるのはやっぱり
「寄るベがない」国家からも放り出されてるし、世の中で自分だけが立ち向かっていく。
そうすると何かにすがりつきたくなる。
社会や友達のプレッシャー、ルール、決まりの解毒剤。
これを読むと何かが抜けるみたいな。シーンに無理がなく嘘がないところが好き。