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SWITCHインタビュー達人達 市村正親×立川志の輔 芸術か芸能か(抜粋)

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対談の話を聞いたとき、ドッキリだと思った志の輔さん。ふたりの星座は水瓶座。血液型もA型同士。下北沢のジャズバーで待ち合わせ。

なんで下北?

市村:なんで今日は下北沢なんですか
志の輔:談志は、私が入門した半年後に、落語協会を脱退したがゆえ寄席中心ではない。喋る場所が自分で探してこい、と。最初にこの場所を。当時ロングランシアターで、1年間毎週水曜日の夜10時から11時までずっとやり続けたために。下北沢は私の、寄席と同じぐらいの落語家生活デビューの街。
市村:ひとりで?すごい冒険ですね
志の輔:落語家3年目ぐらいですから(落語の数も)10個あればいいとこ。週刊誌を10冊ぐらい積んでおいて座布団にしながら、お客さんにその場で記事を読んで落語にする。
市村:創作落語の原点はその記事?
志の輔:そうですね。もっと言えばお客さんを楽しませようという原点。最終的にお客さんが3人しかいないときにですね、どうしようかと思ってバラバラに座ってるので「申し訳ないですけど中央に集まりませんか」本当に落語聞きたいですか?って聞いたら目を伏せるんですよ(笑)ふと思いついて、スタッフにに「お燗ができるお酒4本ぐらい買ってきてもらえませんか」350ぐらいのワンカップ渡して、やってみますかって、4人でちびちび飲みながら(笑)
市村:涙の出る話ですね。泣く場合じゃないんだよ。話を聞いただけで青春だから。志の輔さんが、32~3で、ほら、鳥肌が(笑)

立川談志浅利慶太の共通点

志の輔:18の時に落語研究会で富山から出てきて衝撃受けたのは 落語の台本をしゃべってるんじゃなく「談志がしゃべってる」衝撃。ある時談志の落語を聞いたとき、落語ではなく、しゃべり倒して舞台を降りていくんですよ。そのあとに「芝浜」という名演をするんですけど、落語をやらずに海外旅行のことだけ30分しゃべって、見事に日本が今どういう位置にあるのか。あんだけ笑わせてわかせて、会場中をひっくり返して降りて。これも落語なんだ、すごいな。演目をきちっとやるのが落語なんだけど(演目に)いかに己を入れるのかが落語だと。
市村:作品を語るんじゃなく、役にいかに自分を入れるのかって、浅利慶太さんが「役っていうのはどこにあるんだ?台本振ったってね、役は出てこないんだよ」昔の人間は台本のハムレットに入ろうとする。お前がハムレットなんだ。台本がこっちに入るんだと教わったんですね。似てるなあ。
志の輔:談志も「落語とは業(ごう)の肯定、イリュージョンなんだ」ってね。「わかんないような顔してるけど、俺の毎度の高座がイリュージョンなんだ
市村:僕なりのハムレットでいいんだ。セリフ変えちゃいけないけど。ミュージカルやる人、急に声が変わる人いるんだ。歌うと気持ちよくなって。後ろ行って頭叩きたくなるんですよ。深く広く高く、がいいんですね。
志の輔:またどうしてそういう辛いことを・・なんで?
市村:でもそうすると一番お客さんが喜ぶ。志の輔さんのバイタリティの源はやはり人ですか?
志の輔:落語はただの独り言ですからね。お客さんがいて初めて・・

後半 帝国劇場

市村:日生劇場が多かったんですよ。四季は。あそこはちょうどいい空間で、壁が鳴ってきてね「ミス・サイゴン」で初めてここへ来た時何かこうね、劇場が受け付けてくれてない感じがしてね・・初めてこの舞台に立った時「これはちょっとでけぇなあ!」座った時も「遠いなあ。ここで声を響かせるの」初めはものすごく汗かいてヒイヒイ言いながら(演技してた)壁が鳴るまで3ヶ月かかった。
志の輔:3ヶ月毎日「まだ受け入れてもらえないのか」って演技するの辛いですよね
市村:演出家に面白いこと言われたんですよ。俺サービス精神旺盛だから、一生懸命お客さんに向けてやってた。そしたら外国の演出家が「そこまでやらなくていいから」初日はMr市村がそこまでやってくれたから、カンパニー全体を引っ張ってこれた。でももうここまで上がってきたら、はっきり言って君の芝居はうるさいって(笑)50%でやってくれないかって。そんなことやったら芝居が崩れますよって、まだ40代だから言ったの。でも本当に抑えてやった。そしたら壁が鳴った。お客さんが反応し始めたの。僕半分のチカラでやったの。その時からこの小屋が受け入れてくれた気が。観客の想像力を働かせてあげるのが、もしかしていい芝居なのかな。こっちが全部与えるんじゃなくて。お客さんが働き始めるといい芝居なんだってその時思ったの。
志の輔:談志も晩年は、客が「聞こえねえぞ!」って言うと「聞こえなくていい内容しかしゃべってねえんだ!」(笑)気分的にざわついているのをスーッと一つにして。
市村:舞台は旅。旅の間に僕自身が変わる。やな旅といい旅があるんですね。割と同じことやるわけですから、昨日のことは忘れる。今日の気持ちで歌えば昨日とは違う歌になる。笑いも、昨日ウケたのと同じことをしようとしてもうまくいかない。
志の輔:落語の場合違いますね。ウケねばならない・・

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