きっかけ
最初に小説を書きたいと思ったのはいつ
辻村:小学生の時です
水卜:早い!
辻村:近くの図書館に入った時のことを今も覚えてて。ここにある本を全部読んでいいのかと。すごくびっくりしつつうれしかった記憶があって、そこが多分原点。クラスの女の子たちが交換日記をしていて、隅に延長で小説を書いていた。それを見たときに「あ、書いていいのかもしれない」と思って書き始めて。当時のクラスメートは恋愛小説を書いていたけど、当時からミステリーやホラー小説が大好きだったので、悪霊とかが出てくる話にしよう(笑)
水卜:怖い怖い
辻村:怖いから誰も読んでくれなかった
冷たい校舎の時は止まる
辻村:デビュー作「冷たい校舎の時は止まる」は高校3年の時、もう時効だから言っちゃうんですけど、授業中とかに書いていた(笑)ミステリーで犯人当ての要素があるもの「この人が犯人なんじゃないか」そういうやり取りしてくれるのがすごくうれしくて「次の英語の時間にちょっと書いて進むと思うから、休み時間に読みに来る」他のクラスの子が言ってくれた
水卜:めっちゃいい高校「冷たい校舎の時は止まる」出版されたとき、高校の同級生のみなさんは「私犯人知ってる」みたいな状況だったんですか
辻村:そうです
水卜:わ~、すごいすごい
辻村:素人の私がルーズリーフに書いたものを読みたいって言ってくれる。自分はプロになれるかもしれないと初めて思ったんです。続きが読みたいって言われたことが、ものすごく何より自信になった。
辻村流ミステリー小説の作り方
専門外の業界は自分で取材に行く?
水卜:全く違う分野のことをすごく詳しく書いてらっしゃる作品が多くて。念入りにいろんなところをアポとってご自身で取材に行かれるんですか
辻村:そうですね。そうやってお話を聞いていくと、すごく魅力的な言葉に出会うことがあるんですね。その言葉を本人たちは当たり前のように使っているが、胸に刺さったっていうものがあったら、その言葉と話をどうつなげていったらいいか、星座を結ぶように話を作っていく。ミステリー作家はたぶん、最初からトリックと驚きと真相を明かす設計図を書く人も多いけど、私の場合はとりあえず書いてみてから、徐々にわかることが多くて
夢をかなえるための秘けつ
小説家にあこがれる子に贈る言葉
水卜:小説家のゼロからイチを生み出す頭の中はどうなってるんだろうって。あこがれる子に贈りたい言葉は
辻村:わたしも、ちょっと前だったら言語化ができなかったけど、最近思うのが、とにかく小説に限らず、物語が面白いと思ったら、数をたくさん見てほしい。作家になる前の、目指してるときはそういう瞬間がしんどかったんですよね。こんなに面白いものを書く人がいるんだという気持ちで、打ちひしがれてたりしてたんですけど、今は悔しいんだったら何を書こうかとなれる。それはすごく幸せ。私がそうだったんですけど、周りの友達に読んでもらう。小説がコミュニケーションツールになる。自分の小説に限らず、たくさん機会があったので、そうやって興味の幅を広げるといってもらえると。大事すぎて見せられないっていう気持ちもわかるので、この人にだったら読んでほしいという瞬間があったら大事にしてほしい。
スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)