別世界に導いてくれる本
武井武雄
強い作家だと思うんですよ。強烈にこっちに訴えてくる。20代、プログラマーとして働いていた頃、休憩はたった30分。走って本屋に行っていた。こんなうっとりするものがこの世にあるんだと思ったんですね。いま自分がいる現実世界ではないところに行きたい。持ち運びできる別世界ですよね。
10代の頃も学校へ行くのが苦しくて。本の中にあるもうひとつの別世界を見つけない限り、生きていけない。それを読めば、今の苦しみや悩みが、全て霧が晴れて、自分が別人のようになれる、そんな本があると思ったんですね。
レイモンド・チャンドラー/長いお別れ
高校生の時に出会った。言うのも恥ずかしいんですけど、フリップ・マーロウに理想的な人間のカッコよさを見た。マーロウは常に失敗し続けていて。カッコイイんですよ
さよならを言うのは、わずかのあいだ死ぬことだ。

- 作者:レイモンド・チャンドラー
- 発売日: 1976/04/01
- メディア: 文庫
白土三平/サスケ
穂村さん朗読
光あるところに影がある まこと栄光の陰に 数知れぬ忍者の姿があった
命をかけて歴史を作った影の男たち だが人は 名を問うなかれ
闇に生まれ 闇に消える それが忍者のさだめなのだ
サスケ、おまえを斬る!
奥さまは魔女
こちらも穂村さんが朗読。中村正さんも亡くなってしまいました
1966 奥さまは魔女OP
日本版にしかないところもいいなってね。誰かすごくセンスのある人が、これ(ナレーション)をつけたほうがいいって
生きる力をくれた本
大島弓子/綿の国星
あまりの素晴らしさに愕然として。単に優しくデフォルメしたのではない、この世の恐ろしさや残酷さがここには確かにある。大島さんのお話は必ず主人公が追い詰められますね。この世に居場所がないという。その時その人がどんなふうに扉を開くのかが毎回描かれる。自分は本が扉だと思ってて。だけど見つけられなかった。わらをもつかむみたいにハマりましたね

- 作者:大島 弓子
- 発売日: 2011/08/11
- メディア: コミック
穂村さんは歌集を持って大島さんの自宅へ。推薦文を書いて欲しかった。
郵便受けに「大島」と書かれた封筒が入ってて。大島さんが書いたんだ、と思って。切手も何も貼ってないそれを入れて逃げて。いたずらだと思われても仕方ないですね。でも引き受けてくれたんですね大島さんは。全ての運をここで使ったな、みたいな。これで生きていけると思いましたね
誰かにとっての決定的な一冊になるもの、それとは別にどこかにある奇跡の一冊に出会う。綿の国星を引き当てたみたいに、もう一度そういうことがあればいいな

- 作者:穂村 弘
- 発売日: 2020/09/24
- メディア: 文庫