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SWITCHインタビュー達人達 柳家喬太郎X美学者 伊藤亜紗/ ウルトラマン、吃音の話

柳家喬太郎

2020.2 怪獣酒場でウルトラマンを語る

柳家 ある程度等身大のヒーローじゃない方が好き。
伊藤 現実世界にいるけど、別の世界も持ってたとか、そういうお子さんだったんですかね

柳家 ウルトラマンを、本当に現実の科学で検証するみたいな研究本が出たことがあって「こんなふうに飛べるはずがない」とか、どっかに「お願いだからやめて。僕たちのウルトラマンなんだから。いーんだよそんなの」リアルでかっこいいものよりも、非現実でかっこいいものが好きだったんだと思う。僕がウルトラマンを、成長する中でいっぺん卒業してから大人になる間も、新しいウルトラマンが出てきてるんですよ。いまウルトラマン40何人いるんじゃないですか。もう討ち入りができるんですよ。吉良邸に(笑)もう大変、大変ですよ。大群で襲えるんですよ....そんな番組じゃないですよね(笑)
子供の頃、団地に住んでたんですね。世田谷区の団地で、当時の円谷プロが目と鼻の先にあったんですよ。セキュリティが甘かったんで(笑)僕らは円谷プロの倉庫に忍び込んで「ジラースがいるよウーがいるよ!シーボーズがいるんでぃ!逃げろ~!」やった記憶があるんですよ。

新作落語のプロセス

柳家 僕を形成しているものの重要な一つに怪獣ものがあって、それを自然に新作落語に出てくるのは、考えてみりゃ当たり前のこと。面白いのは、生まれて初めて新作落語を作ったのは落研の時。そのぐらい古い話になると、僕の中でその話っていうのは一つの人格。
僕台本作らないんですよ。お書きになるタイプの方もいらっしゃるんです。ざっくり作っちゃうタイプの噺家の方もいて。ノート見ると

伊藤 年表ですか
柳家 (横浜開港)150周年なので史実をちょっとだけ絡めると、それっぽくなる。ほぼメモだけなんです。これで最終形態です。記憶ですほぼ
伊藤 長いじゃないですか 一字一句覚えてるわけでは
柳家 ないです
伊藤 どうやって記憶して再生してるのか
柳家 記憶しないんですね(笑)忘れちゃうんですよ。忘れないうちに高座にかけて、を繰り返していくと、練り上げるって作業ができて無駄も省けて言って形になってくるんです
伊藤 絵画でも目垢っていい方があって。みんなが鑑賞すると絵が変わってくる。みんなが見るから名画になっていくんだって。いろんな人の手に触れることで
柳家 ああ、わかる気がします
伊藤 お噺は、よりライブ感があるのだし。実際いろんな方が話されて解釈も、文字通り変わっていく

柳家 もちろんです。古典落語の場合はそうやって練られていきますので。逆にいうと埋もれた噺もあって。その中でも「擬宝珠(ぎぼし)」をやってるんですね。明治時代の新作なんですが。若旦那が寝込んでしまって。気の病だと。金物舐めるのが好きな人で、擬宝珠を舐めたいと。浅草寺五重塔のてっぺんの擬宝珠を舐めたいって。あんまりバカバカしいから多分やらなかったんです。フェチの話ですよ。昔はフェチって概念なかったじゃないですか。金物舐めたいなんてたぶん変な奴。だから埋もれていくんですね。平成になってやったとき「これフェチっすよね」そこに魂が宿ったような。生意気なんですけど、昔作った早すぎた話、平成だから令和だからできる。当時の一般大衆は理解できなかった感覚の話がまだまだあるんじゃないかって気がしますよね

伊藤 お話伺っていくと、新作も古典だし、古典も新作だし
柳家 はい(笑)うわ、目からウロコ、ボロボロっと5~6枚。いま実はですね、言われていそうで言われてないことを言ったの
伊藤 ごめんなさい何も知らなくて
柳家 いや、逆に嬉しいです。古典落語も新作だってのは昔から言われてたんですよ。古典だってやりようによっては新作落語じゃないかってのは、そこに提示してるんだから。それを言ってくださったのは...いい番組だわこれ。俺来てよかったわ、ありがとうございます

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伊藤亜紗

どもる体

柳家「美学者」どこで切るんですか「美学の者」なのか「美・学者」なのか(笑)美しい学者。あんまり聞く言葉じゃないんですが
伊藤「落語家」とかわかりやすくて羨ましい
柳家 僕ら「者」だったら「落伍者」(笑)全然ダメな人になっちゃうんで
伊藤 わかりやすく言うと、哲学の兄弟みたいな学問なんですよ。美学は言葉に対する警戒心があるというか。言葉で全て語れないよね、っていうところなんですよ。私が美学を選んだひとつのきっかけは、私自身が言葉に対する距離があった。子供の頃からすごくどもる子だったので、言葉がそんな簡単に自分にフィットしない感じ。しゃべることがいちいちハードルがあった。言葉ってなんだろうって考える機会も多かったし。つまり体置いてかれるんで、どもってる時って。言葉には体の葛藤はのってないし、このズレをちゃんと考えたいというのがあったんですよね

こうやって原稿を書く作業は本当に楽しく、言葉がさらさらと流れていく快感があります。でもしゃべるとなると、言葉の湿度と粘り気が、一気に上がる感じがする。言葉よ、私の体にまとわりつかないでおくれ。

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

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