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SWITCHインタビュー達人達 土井善晴×スタイリスト 原由美子(抜粋)

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原由美子

スタイリストの仕事とは

土井 料理研究家ってどんな仕事?という。得体の知れない
原 スタイリストの仕事も、正確にどういうものなのか
土井 別にいらない仕事でもあるわけですね

原 はい。それは私も原稿に書く事があるけど「朝起きて、今日何着ようかなって思うのは、スタイリストがやることと同じこと」と考えてるわけで、それをプロとして通用するようにやるっていうのはどうなのと、すっごいガチガチに頑張りすぎたんだと思う。ある意味本当に、お母さんがやっていることを、日本ではたくさんお料理の番組がいっぱいあって、あんなに情報あると
土井 わからなくなっちゃう。スタイリストの仕事もどれだけ認識されているのか、私たちも半信半疑で。土台があって、新しく出てきたものを、自分が調べてどう提案するかということだと思うんですね。

原 だからそれは、72年のananから始めて、どのぐらいの雑誌やってきたかわからないんですが、頂いた雑誌のターゲット、読者なり、雑誌の考えてるイメージがあるので。今ここの読者だったらどんなものを着たいか、何を提案すべきかを常に考えて。デザイナーといっても、73年から2011年まで、ミラノ、パリにも行ってできるだけ多くのものを見て、その中から「これだったらこういうふうに着て欲しい」とか、その時々の思いをページに表現するんのが、私の中ではメインだった

土井 きっと背景というものがあるし、それが朝昼晩ということもあるし、旅の始まりとか言うのもあると思うんですね。その場というもの、空間の中の服、誰が着て、何をしてるか、周りにどんなものがあるか。非常に事細かに決めなければならないことが
原 いっぱいあります。どこで撮るのかもね。白バックで洋服だけ見せる感じのがいいか、自然光の中で空間に違和感なく....そういうことを考えて写真に定着する作業が好きだった。そういう意味では、撮るべき洋服が1番綺麗に見えること。それが全てなので。自分が選んだ洋服に対する愛着はすごく強い

土井 原さん自身が持ってる愛着というものが一番の要
原 すごく強いんだと思う。それがなかったらやらないです。

ストーリーで服選び

土井 たとえば「ヨーガンレールの洋服」がタイトルだとしたら、サブタイトルが必要ですよね
原 なぜ今これなのかっていう
土井 あるいは、読者から見て別のところから伝える手立て、
原 自分はこれが好き、とか、連載に使いたいと思った時に、ライターの人を用いて。「原さんこれどうですか」聞かれるのはわかってるから、たぶん(服選びとサブタイトルが)セットで
土井 別の文脈というか、ストーリーがなかったら誌面でも料理番組でもできないと思うんですよね
原 膨らみがない。ある基準を超えた、選ばれた服が並んでるなという捉え方だけの方もいらっしゃる。
土井 その次が、服のどこがいいのかを見つけてなかったら漫然としますよね
原  選ばれないっていうか、選ばない。
土井 選ばないと思うんです。原さん自身も 
原 そうなるためにどうするか。自分では、数見るしかないと思った。子供の頃でも、欲しいモノがなかったら一生懸命見て、パリコレ行きだした頃は、日本では絶対買えない、なんでもないTシャツだけとかそういうのがあって。そういうのを見るのがすごく楽しかった。今の方は、最初っから選ぶ。ひとつのものを真剣に見る度合い、私の場合は一枚の写真からだけど、それが全然なくて。いつでもある程度の値段で、容易くそこそこの値段で買えちゃうのは羨ましいなと思ったけど、もしかして大変なんだなあと。本当に、自分の中で何か持ってなかったら選べなくなっちゃう。
土井 そうなんですよね。まさに現代人はそこなんだなと思う。選び方、ハウツーじゃないけどそういうメッセージが、原さんのお仕事を振り返るだけでも十分にあるような。
原 振り返っていいもんですかね

母のこだわり

原 私すごくネガティブ思考の人なんで、100%満足ってなかなかできない。だから続けられたんだと思う。
土井 お父様が服飾評論家
原 お金を頂かないと、うちの家計が回らなかった。母が異常に器用でなんでも出来て、お料理も上手で。型染めもしてたし、藍染もしてた。徹底的に。だから私何にもできないの。やる気なくなっちゃうの。器用すぎるから見てられなくて、夏休みに何か作るっていうの、全部やってくれたの。「原さん綺麗にできましたね」多分先生もわかってらしたと思う。

バッシング(1985年頃)

朝日新聞への寄稿「自分をどう見せたいか真剣に考えて服を選んで欲しい」に対する読者の批判が「服は自己満足に過ぎない。中身こそ大切」
原 なんかもうちょっと着ることを、みんなに大切にして欲しい」みたいに言ったら、けちょんけちょんに「スタイリストってなんなの?着ることにそんな」或大きな新聞の欄に言われてしまったんです
土井 いやあ、日本人の悪いとこです。
原 だから結構めげて、何年かそれを背負ってたんで。ああやっぱり、みんなにそれ言っちゃいけないのがかなりあるんで
土井 原さん、真面目におっしゃるからですねえ。私ら半分冗談のように
原 洋服とかおしゃれって言うと軽い人とか、そういう傾向も日本では
土井 そうそうそう。子供の時に洋服とか、身なりに構う人は内容が伴わないみたいな
原 だからそのことと、ずっと戦ってきた気がする。なんか日本人の中には、おしゃれは男の恥として育ちましたし
土井 そうですよね。なんか、おしゃれですよねって言われるのが
原 いいことではないですよね。だからそれとの戦いだった気がする