きっかけ
地元のタウン誌で原稿を書いたのがデビューのきっかけ。子育てがひと段落した40歳で作家に。「校閲というか、言い回しがおかしいところとか、誤字脱字を見つけてくださいというところからスタートして、それがそのまま原稿になったんですね。印刷になったとき、自分が手を入れた部分がそのまま活字になってるんですよ。それがもう嬉しくて。たった数文字なんですけど、私にとってはああもっと書きたいな、と思って。だんだん教えていただきながら。取材原稿とかを書いて、それが自分を取材をして感じたことを書きたいなと思ったのが、結果的に小説を書くきっかけに。未だに自分が小説家ですというのには抵抗があります。デビューした時から、作家で今日もなんとかいられた感じ」
振り返れば猫がいる
あなたたちは呼んでも来ない。寝転びながらしっぽをパタパタさせるだけ。抱っこもさせてくれない。
無理やり抱きしめても、するりと腕から抜け出していく。寄ってくるのはお腹がすいたり、遊んで欲しい時だけ。
誰にもおもねらず、自由で、気高い。
私にとって、理想の生き方。
あなたたちは、どんな時も変わらない。
作家じゃなかった私も、作家になった私も、笑っている私も、泣いている私も、誰かといる私も、ひとりのわたしも、くやしがってるわたしも、怒っている私も、いいことがあって、調子に乗っている私も、うそをついているわたしも、ダメな私も
変わらない瞳で見つめている。あなたたちは、いつも私のそばにいる。マロ、ヒメ、ワカ、ルナ、ピノ、メル。物事を斜に見て、一人で生きていけると思い込み、誰もそばに寄せ付けなくなった時でも、あなたたちは一緒にいてくれた。くっちきすぎず、離れすぎず、すこし後ろから私を見ている
自分の存在理由が見当たらず、自己肯定ができず、自分は無価値だと感じ、自分で自分を投げ出しそうになる時でも
あなたたちは、私を見捨てない。そんなあなたたちがどれほど救いになっているか、あなたたちにはわからないでしょ。
どんなときにも変わらないあなたたちがいるから、私は安心して迷い、悩み、苦しみ、前に進むことができる。
あなたたちを大事にします。元気がなくなっても、トイレに行けなくなっても....今も昔も、振り返れば猫がいる。あなたたちがいてよかった。ありがとう。
朗読は松岡茉優。声が似てる。
世の中は不公平。理不尽。だから小説を描きたいと思うんじゃないでしょうかね。喜び、つらさ、悲しみを表に出せるのが小説。だから書けなくなったら、私という存在でいられなくなる....