別館.net.amigo

料理 人生案内 モノ TV 音楽 読書 野球 ラジオ

久米書店 森村誠一 作家生活50周年

ゴーストライターとホテルマ

高卒で一旦就職後、大学進学。

森村:(コーヒーは)飲み方がありましてね
壇蜜:どんな飲み方ですか?
森村:お礼をしてから。音を立てず。おいしい。
壇蜜:高校を卒業してから、大学に入るまでに働かれていたというのは、ご自分から働こうかという気持ちになったのですか?

森村:本が読みたかったんですよね。本が好きだから。学校行って強制的な勉強っていうのがね、自分に似合わなかった。それで、高卒で車の部品会社に就職した。一年半ほど勤めてる間に、部品を都内のお店に配る仕事をしたんです。リヤカー。自転車運搬車。それが駿河台の坂を登れない。困ってたら、明治大学の学生が押してくれたんです。

壇蜜:やさしい・・
森村:それで「青春っていいなあ」と思ったんです。1週間後に辞表を出して、受験勉強して、青学に入った。
壇蜜:そこで時が止まってそのまま続いたとしたら、先生はツナギを着て部品を...ってこともありますよね?
森村:もうあの部品会社にはいないと思いますね。やっぱり物を書くか、あるいはそれを売るか、ゴーストライターするか。
壇蜜ゴーストライター??物騒ですね(笑)
森村:学生時代、やりましたよ。
壇蜜:え?今これ、大丈夫ですか?頼まれてやるんですか?
森村:もちろん(笑)クラスメイトが出版社に就職して、俺んとこ来てね「俺が担当してる筆者が病気になっちゃった。お前代わりに書け」

壇蜜:その方もその方ですよ。それで、お受けしたんですか?
森村:もちろん受けました。こんないいチャンスはないと。そのあともっと面白くて。一年ほどゴーストやったんです。そしたら最初の筆者よりも、僕がゴーストした作品のほうが評判がいいと言われて。そのまま続けろと。それから今度は自分の名前を使って、書いたんです。
壇蜜:なんにも揉めませんでした?
森村:その頃僕はもう、ホテルに入ってましたから。ホテルニューオータニ。ホテルマン時代にあちこち書き始めてましたからね。僕の上役の課長が「森村君、主流に乗りたかったら浮流はするな」と。課長の主流はホテルマン(の意味)だったんだけど、   僕は逆の意味に取っちゃって、物を書くのが主流だと思って(笑)2~3日やって辞めた。とてもね、良かったですよ。ホテルはいろんな人を見ますからね。
   

  

最初は売れなかった

ゾッキ本

森村:ものを書く、本を出すということは、ある程度名前が知られてないと。なかなかどうして、買ってくれない、読んでくれませんから。
壇蜜:生活大変・・
森村:全然売れなくても「あなたの文章面白いから」と、結構連載物書きましたね。その辺のあんちゃんがモノ書いてるとしか、見られてなかった。ある小さな出版社の編集長が、偶然私の何かを読んで、これは面白いと拾ってくれたんですね。それで作家として。ところがやっぱり知名度がないから売れなかった。処女作を三千部刷ってくれた。今なかなか刷ってくれない。三千分の三百冊しか売れなかった。三百冊のうち二百冊僕が買いますからね。
壇蜜:てことは店頭に並んでるうちの百冊・・今これお話して大丈夫...そんな「はじめて物語」があったんですね。

森村:受賞するまで五冊ほど出してくれたんですね。社長が「いくらなんでもあまりにも売れない。森村切れ」と言われたんです。ところが彼が頑張ってくれて「売れないけどなんかある」ゾッキ本(極めて安い価格で売られる新品本)で出してくれて。 たとえば、今日出た本を半額で。表現の世界では売れなきゃ意味がないんです。角川書店のお父さん、源義さんに春樹さんが勘当されて、神田川みたいなところで生活してたんです。その春樹さんがゾッキ本全部読んでくれて。それで勘当許されて。社長になった時に僕のところに来て「書いてくれ」と。3年、もっとかかったかな。そういう出会いが私を随分助け、救ってくれた。小説を書くことは、人生の博打みたいなものですから。

人間の証明

森村:準備段階はあったんですけど、角川書店は雑誌を持ってなかった頃に社運として小説雑誌を出すから書いてくれと。社長が私の顔をじろりと見て「作家の証明書になるような本を書いてくれ」単行本は売れなかった。映画化されてから急に売れた。映像の力はすごい。当時初版が百万ですもん。営業部がさすがに反対して50万部から売ったら売り切れてしまって。だから言ったじゃないか、と。

作家生活50周年記念作品「運命の花びら」

赤穂浪士から東日本大震災まで

森村:北國新聞という、創刊120年のところから求められて最初に書いたのがダメ、2回目、これはよかったんです。けど600枚しか持たないなと思ったんです。千枚書かないと連載にはできない。3回目に書いたのがこれなんです。3回待ってくれたのは大変なこと。作家はいいものを書けば書くほど、それを乗り越えようという気持ちがありますけど、今回だけは、自分で言うのもなんだけど「運命の花びら」疲れた。(笑)ものすごく疲れてね、これを超えるのはかなりしんどい。疲労困憊したというのは、作家として、かなり本懐ですね。登場人物には、書きながらではありませんね。
壇蜜:書き終えて、どうですか?
森村:かなしい、寂しい、そして、わびしいですね。

森村:こんどは、官能小説持ってきたんですから。「エロ小説」ですよ。
壇蜜:エロ小説・・(笑)
森村:嬉しかったですね。普通はね、官能小説は40代。はやくて30代ですから。80のご老体ですよ。私の小説は色っぽいって言うんですよ。間接的にね。品があるって。舞い上がりましたよ。80の老人が言われるわけでしょ。あとがきに書きましたよ「うれしかった」しゃべりすぎましたかね・・(笑)