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【まとめ・感想】視点論点 正月料理のこころ 土井善晴 哲学者エリアーデの言葉。

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数え年~お正月前の心持ち

日本には「数え年」という日本古来の年齢の数え方があります。
数え年では、お正月を迎えると、歳神様からみな平等にお年玉をひとつ
いただくのです。
いわば、元旦は、日本人全員のお誕生日になるのです。
今私たちの生活は、近代化・洋風化されています。
とはいえ、暮れも押し迫ってくると、何かと気ぜわしく感じるのです。
そういった暮れの気分というのは、意外と祖父母の時代と比べても
あまり変わっていないものかもしれません。
今でも多くの人が、今年のうちに仕事をしっかり終え、大掃除など、
家の仕事もきちんとすませたいと感じるからです。
そのように、お正月を前に、一年のけじめをきっちりとつけ
清々しい気持ちを持って新しい一年を迎えられるというのが
日本人の心のありようだと思うのです。

数え年とは

数え年 - Wikipedia
生まれた時点の年を「1年」とし、以降1月1日を迎えるごとに
それぞれ1歳、1年づつ加える。
満年齢とは、生まれた時を0歳とし、誕生日ごとに1歳を追加する年齢の数え方。

昔の餅つき描写

餅つきの日、早朝まだ暗いうちから火をおこして湯を沸かし
もち米を蒸すと、薪のパチパチとはねる音。赤い炎。
立ちのぼる白い湯気に乗って、もち米のいい匂いがしてきます。
薪をくべる。臼を温める。大人達が段取りを進めていく様子は
子供の私にも
「きょうはいつもとは違う。ふざけてはいけない」
大人に混じって、何かお手伝いしようとしたものです。

もち米が蒸しあがると、緊張感が高まって
「よいしょっ!よいしょっ!」と
ひと突きひと突き手声を合わせます。
力強くつく大人がかっこよくて、子供の私も歯を食いしばって
重い杵を振りました。

やがて真っ白い餅がつき上がります。
お餅をよしっ、と打ち粉をした板にとると
今度は祖母を真ん中にして、子供らが餅を丸めて
次々と餅箱を積み上げていくのです。
一年に一度、特別な日の、笑顔で食べるお餅の美味しは格別です。

実りの秋に半殺し

ところで、実りの秋なら、炊き上げたうるち米
粒を残して半殺しにしてぼた餅を作ります。

半殺しとは

この場合「ほとんど死ぬ状態になるほど痛めつけること」ではない。リンチと違う。
お餅を「本殺し」ぼた餅を「半殺し」という。
各地、民話で語り継がれている。
半殺しと手打ち 半殺しと手打ち
minwa.fujipan.co.jp

きっぱりさっぱりスッキリしたい

お正月は、お餅を完全につき殺して、真っ白な餅にします。
潔くけじめをつけて、新しい姿になった餅は
新しい命の象徴となるのです。
何事も滞ることを嫌い、古い汚れを脱ぎ捨てて、きっぱりさっぱりすっきりしたい。
というのが、日本人の心です。
日本の神殿の中心である、いせじゅん・・伊勢神宮は、
21年ごとに建て替えて続けていくからこそ、今も千年前と変わらぬ姿があるのです。
仕事を終え、毎日銭湯でさっぱりすることも
暮れの大掃除も同じ心でしょう。
一年の汚れを払って、身も心もキレイさっぱり、新しくしようというのが
私たちのお正月を迎える心です。
ですから、お正月には、白い餅が何より大切です。

昔話でも、お餅のエピソードは多く、お餅がなくては年を越せぬ、
お正月が来るというのに餅がない、という暮らしの厳しさをたとえる言葉に出てまいります。

各地のお煮しめと魚

餅はお正月の主。
そのように考えますと、次はお煮しめです。
お煮しめの材料は、蓮根、ごぼう、こんにゃく、里芋、人参など
そのほとんどが、日常的に食べているものと変わりありません。
しかしこれを、家族の幸せや感謝の念を込めて
丁寧に姿よく料理をします。
花型に剥いたり、「家族円満に」まん丸に剥いたり
人と人との間に角が立たないようにと面取りするのです。

日常にはしないことですが、たっぷり一つ一つの素材を尊重して
別々の鍋で煮しめます。

地方によりつぶした鶏で、出汁を取ることもあるでしょう。
また、鶏肉を根菜と一緒に油炒り煮したのが筑前煮。
贈答品であったかまぼこを、根菜と一緒に、澄んだだし汁で煮たのが大和煮です。
お正月のために取り置いたゼンマイやタケノコを、
身欠きにしんと一緒に煮しめる。

手をかけた昆布巻、このように様々なお煮しめが全国に伝えられています。
お煮しめには手をかけたご馳走と一緒に
伊万里の大皿や大鉢に盛り込んで、御膳に並べます。
お国柄を生かした自慢の魚の焼き物、年取り魚としての
塩ジャケや塩ブリ、おめでたい真鯛出世魚のブリや鯖
ハタハタなど、その土地に欠かせぬ魚があるのです。

おせち料理

ふるさとを離れた者も正月には帰ってきます。
いっしょに過ごすことは孝行で、家族揃うことが幸せです。
家族みんなの喜ぶ顔が楽しみ。
お雑煮とふるさとの料理を用意する。これが庶民のお正月料理です。
現代においては、お正月においてはお重詰になっていますが
漆のお重に詰めたおせち料理
江戸時代の宮中行事を庶民が習って広まったものです。
大昔から、宝物は漆の道具に収めるという習わしが
お重詰のスタイルを作りました。
高価な塗箱を三段、五段と重ねるのが重箱です。
一の重にはお魚料理や縁起の良い縁取り料理、
二の重には魚介の酢の物、三の重には焼き物。四の重にはお煮しめ
五の重はそのまま開けておくか、好きなものを取り合わせて詰めます。

まめに暮らせるように「黒豆」五穀豊穣を願って「田作り」
細くとも長くと「酢ごぼう」子孫繁栄を願い「かずのこ」をこしらえます。
他にも金運を願い「きんとん」かまぼこ、伊達巻があります。
お正月に用いる道具も清らかなる物、縁起の良いものを用います。
箸はしなやかで折れない「白木の柳箸」
お取り皿なども縁起の良い吉祥紋様、
清らかさの象徴である白い紙、神宿る松や南天をお料理に添えて飾ります。

哲学者エリアーデの言葉

このようにお正月料理にふさわしい道具やお料理に願いを込めて
それなりに言葉を大切にするのは、単なる語呂合わせのお遊びのようですが
哲学者・エリアーデによると
「人間の根源的な神聖は、象徴作用としてあらわれる。」

私たちの心根と直結しているのです。

元旦の朝の心得

身支度を整え、きれいに装う。
家族の間でも改まって「あけましておめでとう」とごあいさつをする。
おとそをいただきます。
一番年下の、小さな者から順番に、盃をとり
お屠蘇を注いでもらって口に含みます。

おとそ(御屠蘇)

晦日屠蘇散(とそさん)を酒やみりんに浸したもの。
一年の邪気を祓い、延命長寿を願って飲む薬酒。
屠蘇(とそ) - 語源由来辞典

おとそをいただいて、
お餅の入ったお雑煮を食べることで、新しい命が
ひとりひとりの肉体に宿るのです。
山海珍味を盛り込んだおかずは、必ずしもなくても良い。
日々揃えた具がたくさん入ったお雑煮で良いのです。
どうぞお代わりしてください。
私たちは年の暮れに、年神様をお迎えするために
清めるように掃除をします。
おせち料理作りは神様と一緒にいただく料理。神人共食の準備です。
神祀ること、神いますようにと
丁寧にきれいに手を動かして整えます。

お正月はご馳走を食べるためにあるのではありません。
こういう時代だからこそ、きちんと整えて
お正月を迎えたいと思います。
たのしいことは、お正月でなくとも、
日常生活にいくらでもあるのですから。
皆様どうぞ良いお年を。

おいしいもののまわり

おいしいもののまわり

祝いの料理

祝いの料理

感想

「半殺し」の件は脳内に必殺仕事人が流れて困った。
料理は哲学。
エリアーデを愛読している土井善晴先生。
素晴らしき昔の正月描写が光る10分間でした。

前日こんなツイートが流れてきた。