「三匹の子ぶた」裁判、トン三郎の罪
被告人・トン三郎、オオカミ殺しの罪に問われる。
検察官:起訴状を読み上げます。被告人のトン三郎は、二人の兄がオオカミに食べられそうになったので、次に自分が襲われる前に、オオカミを殺そうと決意しました。7月7日午後3時頃、自らオオカミを自宅におびき寄せたトン三郎は予め戸や窓を塞ぎ、オオカミが煙突から入るよう仕向けました。そしてお湯を沸かしておいた大鍋の中にオオカミを転落させました。トン三郎は、すかさず鍋に蓋をし、おもしに石を乗せ、オオカミを死亡させたのであります。トン三郎が犯した罪は、刑法第199条の殺人罪にあたります。
被告人、いま検察官が読み上げた事実に、間違いはございませんか?
トン三郎:はい。ボクはオオカミを殺してしまいました。でも、おびき寄せてなんかいません!オオカミが突然襲ってきたんです!
弁護人の意見はいかがですか?
弁護人・山西ハジメ:はい、トン三郎が言ったとおりです。自分の命を守ろうとしてやった行為ですので、正当防衛で無罪です。
裁判のポイント
正当防衛が認められるかどうか
突然狼に襲われ、身を守るために殺したのなら無罪。計画的におびき寄せて殺したのなら有罪。
証人(亡くなったオオカミの母、事件の第一発見者)
息子が晩御飯の時間になっても帰ってこなくて、カレンダーを見たら
「3時 豚肉パーティー トン三郎の家」
と書いてあったんですよ。 ※共食いかよ
ノックをしても返事がありませんでした。それに、窓には板が打ち付けられていたんです。
隙間から何が見えましたか?
大きな鍋の中で、息子が・・ぐったりして・・(泣)
他には、テーブルの上に
「オオカミのただしいころし方」という本が。
本の正しいタイトルをくりかえします。「オオカミのただしいころし方」ですね?
※すびばせん・・
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はい。
弁護人の反対尋問
あなたがトン三郎の家に行ったのは、夕方の6時ごろでしたね?日が落ちて薄暗い森の中、家に明かりはついていなかった。それで中の様子はちゃんと見えたんでしょうか?
母:ええ、はっきり見えましたよ!
そうですか。現場に置いてあった本ですがタイトルを読み上げてもらえますか?
オリガミのたのしいおり方
※ゴメンナサイ・・
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あなたが見たのは「オリガミのたのしいおり方」異議あり!
母:そんなはずないわ!確かに見たのよ!
次の質問にまいりましょう。息子さんの部屋のカレンダーについて。カレンダーにはなんと書かれていましたか?
「3時 豚肉パーティー トン三郎の家」
トン三郎がパーティーをやると言って息子をおびき出したのよ!
なるほど。では仮に、息子さんがパーティーにトン三郎さんを呼んだとしましょう。そういう時にですね「豚肉パーティー」という呼び方をするでしょうか?
ええ?
だってそれって「僕を食べてみんなで盛り上がろう」と言ってるのと同じですよね?
つまり「豚肉パーティー」は「息子さんがトン三郎を食べに行くぞ!」という意味だったのではないか?
異議あり!憶測です!
裁判員:なるほどなぁ。でももし、トン三郎がオオカミを挑発しておびき寄せたとしたらわざと「豚肉パーティー」って言葉を使うのもアリなんじゃないかな。
証人尋問
弁護側証人・トン一郎(兄)
あなたは、なくなったオオカミのことを、事件前から知っていましたか?
はい。オオカミは、ある日突然襲ってきたんです。僕が住んでた藁の家を吹き飛ばしました。そして、弟の住んでいたトン二郎の木の家も、あっという間に吹き飛ばしたんです。ボクらは命からがらトン三郎の家に逃げ込みました。オオカミは、あなたたちのことを食べに来たんですね?
はい。オオカミが入ってきたらおしまいだと
僕らは慌てて戸や窓に板を打ち付けました。
でも狼は諦めなかったんですよね?
はい。オオカミは煙突から入ってこようとしたんです。
「食べてやる!」と叫んで。
それは怖かったでしょう?
はい。すぐにトン二郎と隣の部屋の押し入れに逃げ込みました。
トン三郎はどうなりました?
にげおくれました。腰が抜けて動けなかったようです。
オオカミを鍋に閉じ込めるために使用した漬物石登場。
トン一郎さん、ちょっと持ち上げてもらえますか?
こんなに重い石を、腰を抜かしていたトン三郎が、素早く鍋の蓋の上に乗せる。そんなことが可能だったんでしょうか?
死ぬところだったんですよ?信じられない力が出たんです!
そうかなぁ、本当は、3人で計画していたんじゃないですか?あなたとトン二郎さんが二人で石を持ち上げ、トン三郎が蓋をしたところに素早く乗せる。そういう作戦だったんじゃありませんか?これは殺害の計画性に関わる重要な質問です。
被告人質問
弁護人:オオカミが煙突から来て怖かったでしょ
トン三郎:はい。怖くて、もうおしまいだと思いました。そしたらオオカミが足を滑らせて落っこちてきたんです。
弁護人:あなたは慌てて、鍋に蓋をしたんですね?
トン三郎:出てきたら食べられてしまうと思って、必死で抑え続けていたんです。しばらくして恐る恐る蓋を開けたら、オオカミが死んでいました。
弁護人:その時あなたはどんな気持ちでしたか?
トン三郎:助かった、と。正直、ほっとしました。
検察官質問
あなたは、窓や戸は板で塞いだのに、煙突は塞がなかったんですよね?それって「どうぞここからお入りください」と言わんばかりじゃありませんか?
・・そんな、まさか煙突から入ってくるなんて思わないです・・
しかも、あなたの家の煙突の中は、油がギトギトにこびりついていた。狼を煙突に誘い込みさえすれば、煙突から滑り落ちる。そういう計画だったんじゃありませんか?
違います!
異議あり!誘導尋問です!
質問を変えます。これは、あなたの家にあった鍋です。
購入したのは、事件の3日前ですね?オオカミの体がすっぽり入るほどの鍋が、どうして必要になったのでしょう?
兄と3人暮らしになったからですよ。僕たち豚が大食いなのは皆知ってるでしょ?
しかも犯行当時、大量のお湯がグツグツ湧いていた。食事どきでもないのに。
それは、部屋が乾燥しないように1日中鍋にお湯を沸かしっぱなしにしてるんです。そこにたまたま狼が落ちてきたんです。
裁判員:もし蓋を開けたら、トン三郎の命はなかったんだよな・・
最終弁論
検察官:裁判員のみなさん、トン三郎が、事件の直前に大鍋を購入していたこと。タイミングよく大量のお湯を沸かしていたことなどから、オオカミを殺そうとしていたのは明らかです。これは計画的犯行ですから正当防衛は認められません。トン三郎は有罪です。
弁護人:裁判員のみなさん、トン三郎の立場になって考えてみてください。身の危険を冒してまで、そろしい狼をわざわざおびき寄せるでしょうか?失敗したときのリスクがあまりにも高すぎます。自分の身を守るためには狼を殺すしかなかった。これは正当防衛、無罪です。
ファッ??
判決は??
オチは??
これは無罪だろ!!
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