早朝に目を覚ますと、金魚が浮いていた。
先に起きてきた夫が、埋葬しに行った。
たしかに、ここ数日、ぢっと動かずにゐた。水槽をつつくとちょっとだけ泳いでみせるが、餌を欲しがらなくなった。3ヶ月前に買い換えた広い水槽で、気持ちよく泳ぐ姿は、もう見られない。
かれは、8年前、金魚すくいの金魚と一緒に、ホームセンターからうちにやってきた。活きのいいちびを購入。5匹の中では一番小さな金魚。短期間に次々と伝染病で死に絶えてしまい、かれだけが生き残った。ちびだった彼は、8年間で15センチほどになり、坊主の友達は「フナオ」と呼んでいた。
金本という名の金魚。 - .net.amigoココログ跡地2007~
名を呼んだからといって、餌を欲する時以外は近寄って来ない。坊主(当時小4)「野球選手にちなんだ名前がいい」というので「金魚」の「金」をとって「金本知憲」と名付けた。その2年後に坊主が読んだ本
生き残るなんて鉄人だ、と言ったけど、わたしら「鉄人」といえば衣笠祥雄を連想する。アニキは嫌いじゃない。でもうちら家族は阪神ファンじゃない。
ずっと定位置にあった水槽を洗い、水を抜き、敷いていた小石を乾かす。
ふと思った。
広い水槽で1匹だけの人生、うんにゃ、魚生は、かれにとって満足だったのだろうか。
このところお気に入りの曲は「墾田永年私財法」笑っていいのか泣いていいのかわからない。
何かを手に入れるってことは 何かを失うってこと?
失うものがあるってことが 今君を強くする
自ずと力が入るでしょ
たかが金魚、されど金魚。聴きながら金魚を偲んでみる。墾田永年私財法は743年、金魚が亡くなったのは2014年10月9日。このふたつは、曲を聴くたびに思い出すだろうな。永遠に 永遠に 永遠に