写真の生きざま、映画の死にざま
不良と言えば究極の不良・・・
視線の先に市川海老蔵の写真。
(01年当時は新之助)
操上:19歳。海老蔵になる前ですね。目とか、根性が座ってますからねこの人は。小さい時から歌舞伎をやるという心意気。そのために鍛錬してきたことが肉体化されてる。何かやるときは残酷なぐらいわがまま、実はすごくナイーブ。
三池:「一命」って映画を撮った時、共演者のお芝居をずっと観てて自分も演ってる。全然そこは泣いてはいけないシーン。テスト中にボロボロ涙が出てくるんですよ。その人間がいずれこの後命を落とすことになる。だから涙が出てくる。そのナイーブさを自分で隠して否定してきたんでしょうね。
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操上:開高健さん。月世界に来たのかなって静寂感。笠智衆、亡くなる2年前、87歳の時。背中におぶって鎌倉の海岸を歩きながら撮影。他にも宮藤官九郎や蜷川幸雄の写真も。たけしはカラー。←(あっこれ、もしかして「野戦病院ツアー」(85年頃)のパンフレットかな。写真集仕立てになってたし。photo:WHISPER-NOT O.P.F.C だから思い違いか)
操上:三池さんって最初の印象はすごい優しい方かと思ってた。実際に作ってるものは優しくない。強固なものがあるから優しい顔は撮りたくないな、と。「首絞めてください」って言ったでしょ。人間自殺願望とか死ぬっていう、死に行く自分を見据える瞬間の眼。プリントするときは目を中心に。実際より明るく。
三池:たけしさんの映画のエンドロール、墓標に見えるんですよ。つくりあげたものたちです。生きてるんだけど墓場に見える。名前そのものが力を持ってくる。
操上:映画は作り上げた時間を撮るクリエイション。かつてあった時間なんだけど今ここで生きている時間ということも言えるんですよ。
三池:全体的に男性が多いですね
操上:女性は光を美しく反射する。男は光を吸収する。そういう男にチャーミング、魅力を感じる。男の人に惚れるセクシュアリティに触れる快感、憧れ。あの仕事をする男、描く男。好きになれなかったら撮れない。
三池:自分も演じている人間やスタッフを好きになれないと一歩も進まない。内心主役を「どうもなぁ」「売れてるけどなぁ」じゃ撮れない。欠点を含めて人を愛することができないと。と言いながら操上さんも「コイツ、だめだな」と思った人いるでしょ?
操上:いっぱいいますよ(笑)「撮っても駄目だなコイツ」「しょうがねぇな」それ以上のものにならねぇなってのもある。満足感がないからつい粘って長くなる。
三池:今とってほしいと言う瞬間と、撮る方のシャッター押すタイミングが、心地いい人となんかずれる人。関係によって変わるんでしょうね。
操上:いいリズムで入ってくる人、自分の存在は何か相手に与えていると感じる。極端な話、空シャッターというのもある。できなくても瞬間的に1,2枚撮っちゃえばいいのももちろんある。
撮影はセッション。
操上さんにとって究極のセッションは大江健三郎。静かに静かにって感じの人。生まれ故郷の四国で散歩しながら。人の心の声を聴くってイメージだから。その瞬間を2年待った。空気は人間にまとわりつくもの。その人が発する空気みたいなものを撮ると「撮った」になる。

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操上:北海道の富良野。当時旅もできない。こっから出たいと思ってるとき、写真家って旅に出て撮ることができる。専門学校へ行こうと。24歳の春に夜汽車に乗って。「津軽海峡冬景色」ですよ。連絡船に乗って。畳に詰めたてないとすべって。「俺は二度どこの船には乗らない」船を下りるとみんな汽車に乗るために走るんですよね。競争。俺はもう二度と汽車には乗らない」広告写真とは企業のために成り立ってるものなんだけど、それをやる自分は何なんだ。自分をアピールしないとただ撮ってるだけじゃダメなんだ。切羽詰まると自分の中の潜在感覚が思わぬところで出る。
三池:自分らしさを出そうとする余裕が邪魔。どんな仕事でも愚痴るじゃないですか。タメとけばいいのに。がけっぷちで自分が持ってる力は出るはずなんですよね。

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実写化
操上:リアルなストーリーよりも好きですか
三池:漫画の世界を、漫画を越えた感じで表現できたらいい。リアルに撮っていくものももちろんやりがいはあるけど、その漫画をまず誰よりも好きなファンになることが大事。リスペクトすることからしか始まらない。漫画を実写化すると「俺の漫画を実写にするな」と思ってる人が「してもいいかな」と思ってくれること。
操上:この10年間、映画の中で何人ぐらい殺しましたか
三池:1000人ぐらいは超えてるんじゃないかな。主役を強く見せるために一発ボコっとやられて「すいませんでした」って台本が送られてくる。それには徹底的に逆らっちゃう。今、脇に甘んじてる人間だって光る瞬間はある。すいませんでしたって言った瞬間ケリだしましょうか。その人が何度も起き上がるから「あなたの映画は暴力シーンが多くてひどいですね」って言われる。(略)役者になってよかったな、って言う瞬間をボクらは生み出せる。脇役に愛情をかけるとバイオレンス映画が出来上がる。愛情とバイオレンスはイコール。

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ふたりはよく似てる感じ。兄弟のよう。