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SWITCHインタビュー達人達 天童荒太×中谷美紀 今語る「永遠の仔」(抜粋)

永遠の仔

天童:「永遠の仔」に出ていただいた時、子ども時代に性的虐待を受けた役だった。その人物の心を生きることをされているのが分かってきた。意思の強い人なんでしょうね。演技に出てるので、そういう人と話すと、新しい言葉とか考え方が触発されて生まれるんじゃないかと。触発の場にしたい。 

中谷:上っ面のリサーチでは書けないような、人の魂を揺さぶるような作品を書いていらっしゃるので「求道者」(ぐどうしゃ)とでもいうべきでしょうね。

人になりきる作家、人の心を生きる女優

天童:「永遠の仔」台本を読んで、演出家の言われるままきちんと演じようとしただけでは、根っこ、虐待されて育つことまで降りていかないとその表情にいかないってことが分かって。
中谷:あの作品のあと、何年か経っても街中で「私も同じような経験をしたもので、感謝してます」とか、ご自分の生涯をかけてあれだけの作品を書かれて。相当な疲労感を抱えてらっしゃるのではないかと。

天童:「永遠の仔」の時は疲れましたね。そうせざるを得なかった。虐待を受けた子供たちが成人して以後の話なので、その心を生きないと何一つ本当のことは生み出せない。ゼロから形にするから。吐息とかため息とか涙とか、その人になりきって書く。 

制作ノート

目を閉じてその気持ちのままわーっと書き、となりのページでは天童荒太に戻って書く。中谷さんは終わると台本を捨ててしまうタイプ。シュレッダーにかけるのが気持ちいいそう。
天童:そういう人に会えないし、そういう先生に会っても(当人に)会わせられるわけではないので、小説にするのは不純ですから、自分がそうされた人間として、その時間をずっと生きていく。友人にも会いたくなくなってくるし、結婚式に誘われても誰かに「おめでとう」なんて言えない。
中谷:まったく同じですよ。永遠の仔を演じていた約4カ月、友人からの誘いはすべて断ってました。
天童:笑顔出せないもんね
中谷:食事も控室で一人。雑談ぐらいは交わしますけど「お願いだから話しかけないで」
天童:同じ思いをしてたんですね
中谷:あんなつらい思いは二度としたくないです。読むのも嫌です。今回対談するから一度読んでおこうと思ったけどだめで、野ヅラできました。
天童:自分の中に今もいる優希たちが起きてくるのは耐えられない。

白洲正子の娘は、ドラマを見て「母が生き返ったようだ」と言った

天童:中谷美紀という女優は、象徴的な台詞に血と肉を与えて届けられる希有な女優だと思う。Will(意思)するっていうの、意識したことある?
中谷:むしろ極力傍観者でありたいと思って来たんですが、意思が見えるということは、よっぽどエゴが強いんですね私。

天童:僕らは割と「憑依型」「のめり込み型」と言われるんですが「白洲正子」能、なぜそこまでする?

中谷:残念ながら私は天才型ではないので、いわば器用貧乏タイプだと自分で思っている。貧乏を埋める部分がお稽古事であったりとか、旅に出て覗いてくるとか。器用がコンプレックスかもしれない。初動だけはできちゃうので。表面だけなんです。できちゃうのが。そこに深みがない。何一つ自分で成し得ていない気がする。

天童:埋める作業は、Willでしょ。意思でしょ。
中谷:たまに「やっててよかった」と思える瞬間がある。でも台本もらって、読みたくないのでしばらくは横に置いてる。なんで続けてるんでしょうね。普通に考えたらおかしいですよね。人前でわめいたり泣いたり、普通の大人はしない。嘘をどれだけ真実に見せられるか、そこに賭けてる。
天童:なぜ人はウソが好きなんだろう。

三谷幸喜は中谷さんを「かなり変わった人」「もうすぐ彼女の出番になるのに寝てる。起きて来て読み合わせをすると完璧。床で寝てることもある。どんだけ眠い人なんだ」

【抜粋】ボクらの時代 オダギリジョー×中谷美紀×若林正恭 インド旅行記 泥酔はらくだし キューバ - 別館.net.amigo

後半

舟越桂の作品が展示してある画廊へ
天童:チューニングを合わせたら鑑賞じゃなくなる。同化に近くなるから。人間が滅びない先にきっと希望がある、ということを伝えたい。僕自身祖母が寝たきりだった辛さがある。 

年表付きの創作ノート。

筆を、手を通して伝わってくる時間が必要。辛いものを抱えて生きてらっしゃる人は実際いらっしゃるが、社会の主流は「明るく楽しく困難を切り開く」そうしたくてもできない人たち、置き去りにされてる人達が、自分たちのことを振り向いてくれる表現者はいないものかと。その役割はいないか。いや、一人いるよ。僕よく「やめたい」って言うけど、書くことを辞めたいわけじゃない。いつでもやめられる感覚を吐き出すことで、自分に納得させて「よし、じゃ。潜りに行こうか」辛い人の心を描く仕事なので「潜りに行く」感覚