感想
本を味わう、それだけの旅
美しい北海道の映像、作品中に登場した曲も流れるし(モーツァルト・コンチェルト第20番ニ短調、JonnyB.Goodなど)ワールドブックカフェも森彦もちゃんと紹介される。朗読だって鈴木浩介の声がいいから聞きやすい。悪くない。なのにふと「大分麦焼酎 二階堂」のCMを思い出す。あのCMは好きだ。
「映像散歩」と「おやすみ王子」を足して「二階堂」で割ったような番組。もしも夜中に流れていたら間違いなく寝落ちする。だって時々忠実に羊たちが出てくるからだ。こういう時のサプリメントのCMは現実に引き戻されてしまってうんざりする。何が中性脂肪だ。なぜすっぽん皇帝なんだ藤原喜明が突然出てくるのは何か意味があるのか。せめて78年当時のファラ・フォーセットの映像を出せ。
いつも読むときに文章が脳内再生される。「風の歌を聴け」の時は先にATGを見たせいか(深夜テレビだった)原作を読むときは小林薫の声が頭の中で響いた。「羊をめぐる冒険」もそうだ。だから鈴木浩介の声でビジュアルを見ながらだとイメージが変わってしまう。何かが違うような気がする。妻や誰とでも寝る女の子や耳パーツモデルは、どういうわけか高樹澪の声が脳内を流れていた。
羊をめぐる冒険
初めて手にとったのは高校生の頃、図書館の新刊コーナーで見つけた。試験勉強をしに来たのに佐々木マキのイラストに惹かれて勉強どころではなくなった。借りて家で読んでみた。15歳では、わかったようなふりになっていただけで、何も分かっていなかった。わかったようでわからない、つかみどころのなさが村上春樹の魅力だと、今でも思う。
それにしても、これでもか、と思う様な朗読量の長さだったな。
俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさや辛さも好きだ。
夏の光や風の匂いや蝉の声や、そんなものが好きなんだ。
ハルキストなんていなかった頃から読んでいた。あれとてテレビが取り上げなければ単なるファンサークルやん。もうほっとけや。
ご本人も望んでいないのだから
今年のノーベル文学賞が発表見送りになったのでハルキストはさぞ落胆してるだろう。思い出すのは一昨年のノーベル文学賞発表の日。村上春樹の母校・神戸高校に文学賞発表にあわせ集合していた関係者からため息まじりに漏れた「ボブ・ディランは歌手やろ…」というフレーズの切なさ。今も心に沁みている
— ㍿ 紳士 (@hide_luxe) 2018年5月4日