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SWITCH インタビュー 達人達 松本幸四郎×草間彌生 創作とは(抜粋)

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創作とは心の支え

生と死について

草間:我々の生んでいる社会の中で輝く星のようなあなたの 私のところにおいでになったことについて、非常に感動しております。大変ありがとうございました。うちのスタッフも「是非一目見たい」みんなそう言います。本当にみんなに愛されて、こんなところに来ていただくような、本当に失礼いたしました。....おすわりになって。今日歩いてらしたんですって?

幸四郎:はい。あの、近くから。ちょっと今日はいい格好して(笑)先生にお会いできて光栄なんですけども、今描かれている絵は後どれぐらいで完成?

草間:三日で一枚か、一日一枚か、ひとつにつき一年間か、みんなそれぞれね。なぜかというと、作品によって違うのよ。ものすごく時間がかかったり、なかに作品がうもれてて、上に3つか4つ重なる時もあります。

幸四郎:いっぺんに何枚も、ってときもあるんですか

草間:そうです

幸四郎:まだまだ描かれるもの、というか描きたいものがあるんですか?
草間:いっくらでも出てくるの
幸四郎:次に何が、っていうのが浮かんでくる
草間:頭の中に。こんなもの出るとか全然知らなかったの、描いてるうちにこうなっちゃう。これもそう...今日も死ぬほど絵を描いて、それで疲れて、三時半頃ね、目を覚まして。夢ん中に出てくると、朝まで描き直して作り直すの。私は自殺しそうになったときに、ものすごく落ち込んだ時なんか、絵を描いていることによって忘れる事が出来る。あなたも、あれでしょ、落ち込んだことはないでしょ?

幸四郎:しょっちゅうありますけど
草間:素晴らしい歌舞伎の世界、大きな存在なんだから、それで落ち込んだ気持ちが治ることあるでしょ?
幸四郎:ああそうですね、幸せなことに舞台は常にそばにいてくれるので。舞台で演じる、役を演じることでそれに支えられたり励まされたりってことはあります
草間:そうでしょうねえ。闘いだと思いますよあなたの場合。非常に大きな仕事やってらっしゃるから。

幸四郎:大きな作品を描かれて、人にお見せするのはどういうテーマで
草間:そうですね、いろんな要素がいっぱい入ってる。死ぬこと、生きること、原爆、神様の住処。
幸四郎:死に向かっている意識の方が大きいというか、死というものがあるというか、限りがあるという
草間;生と死について。それについての闘い。少しでも素晴らしい仕事を後世に遺していきたい気持ちが
わたしを動かしています。こういった作品を作った人は誰もいない。自分の場合どこにあるの?

幸四郎:いやぁもう...ただただ頑張るしかないですが
草間:だって頑張るのは私たちと違って難しい。いろんなやり方があるでしょ?ね、それを学ぶのに一生かかる。大変な事業をあなたは引き受けたと思うの。大変なことだと思う。普通の芸術家より何倍も努力しなかったら、あなたがやっていることは、成し遂げていくのは難しいわよ。

幸四郎:僕の場合だと、好き 歌舞伎が好きっていう
草間:気持ちがあるわけ?
幸四郎:はい。
草間:そのせいですか。ずっといたの。私が絵が好きだってこと、あなたが歌舞伎が好きだってこと。それで一生懸命やってるの?
幸四郎:それが支えというか
草間:いつから一生懸命に?子供の頃から?
幸四郎:子供の時からです
草間:親から言われたから?
幸四郎:それは、ないです。
草間:それは大したことですあなた、天才のやることだわ。うんと大事にしなかったら後世に遺らないよ。大事にしていかなきゃ。

幸四郎:今日はここまでにしよう、とか、あるんでしょうか。僕なんか「今日の稽古はここまでにしよう」すぐヘタっちゃうんですけど。
草間:私だってヘタっちゃうもん(笑)お互い芸術家でもって闘ってるでしょ?私も一つ言いたい。絵を一生懸命に描いてて、お昼ご飯が来てるのを忘れちゃって、食べてないけど絵を描いてるでしょ。三時頃になってクラクラっと倒れそうになってフラフラと。そしたら「草間先生はご飯食べてないからそうなる」「そういえばご飯食べないで絵を描いてた」

幸四郎:おなかすいた、とかはないんですか?(笑)
草間:あるんだけど忘れちゃって。絵の方に夢中になっちゃってる。...(人々が)わ~っとくる。あなたを一目見たいって。それがすごいね。あなたは特殊な芸術家。私たちは黙って絵を描いてるけど。あなたの場合、みんながキャーキャー言ってるの。本当、どうして?それが聞きたいの、教えて(笑)一般の人達が憧れてるね。私の場合憧れてる?どう?

幸四郎:それはもう、世界中が憧れられてると思います。私はいくつになってもキャーキャー言われたいんですけど。

草間:あ、そう?うちはやってるよね?キャーキャー言ってるね?
幸四郎:ありがとうございます、すみません(笑)
草間:私たちは旗手なんですよね。
幸四郎:旗手なんですね。自分が目指してるものを信じて生きているってことなんでしょうか?
草間:そうでしょう。やっぱり、人生の闘いの中に芸術は存在してて、それを乗り越えてゆくことが、人間としての存在感だと思ってる。

幸四郎:ずっと先生のそばに絵はあった
草間:絵でもって私は自殺未遂を乗り越え、精神的に落ちくれていたとき、どういうことでもって元に戻すかって絵の世界です。だから私は絵かきであり、芸術家である。あなたが歌舞伎役者であって、その中の輝いた星である。あなたたちはキャーキャーの人たちどころの騒ぎじゃなく、自分で鍛え直してもっと前へ進む。その姿勢があなたの人生観であり誇り。あなたは一つの大きな誇りを持っています。私も誇りを持ってます。芸術に負けないでそれを乗り越える。自分の人間としての努力。それに対して私はひとつの誇りを持って生きていますよ。あなたは、私たちよりももっと努力が必要だったと思います。今だってそうでしょ

幸四郎:今でも闘いですか
草間:芸術家っていうのは一種の闘い。
幸四郎:闘う力っていうのはどこから生まれるんでしょうね、先生は、そこに芸術があるから?
草間:そうです。自分は今、何を求めて、どういうことをして社会に尽くすことができるか、前衛芸術家として自分がやれることはどういうことであるか、いつも考えながら自分の道を歩んでいきたい。それが私の念願であります。いろんな社会の動き、原爆に対する社会の扱い方、貧乏な人々に対する人々の愛情、生活に行き詰まった人たち、芸術、人生に敗北して自殺した人たちに私たちの限りない愛情と興味、励ましを持って、芸術家として私たちはもっと歴史の中に素晴らしい社会を作りたい、そういう立志を持って毎日を過ごしていく。もっともっといい作品を作って行くことが結局私の大きな生きがい。

無限の網―草間彌生自伝 (新潮文庫)

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草間彌生全版画 1979‐2017

草間彌生全版画 1979‐2017

幸四郎:曽祖父から歌舞伎役者の家で、生まれた時には歌舞伎の環境でしたけど、ほぼその時から舞台に立ちたいと。6歳で舞台に立って。好きだってだけじゃなく父や祖父が劇場に立ってる姿に憧れがあって、想い続けて今があると思ってますけど、これからも立ち続けたい。
草間:みなあなたに期待してますからね、それをお忘れなく
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