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【抜粋】SWITCHインタビュー 坂東玉三郎 × 松任谷由実  孤高の人 

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坂東玉三郎

やらなきゃ気がすまない

ユーミン お稽古を小さい頃からされてるとは思うんですけど、中でもダントツに玉三郎さんが「すごい」って勝手に思います

玉三郎 あんまりそういうのはないの(笑)できればお稽古は究極、したくないけれども、自分の思った理想、目標を下げることができなくて。そこまではいかないんだけども、理想に上り詰めるためにはこれだけしなくちゃならない逆算とかあるから、できれば逃げたいの。
    
ユーミン 分かります。逆算ができるところが、できない人との差ですね。
玉三郎 あるいは逆算ができなくても、とにかくやっておけば無事かなっていう気持ち。
ユーミン 守ってくれるのはそれしかない。舞台に立つってジェンダーレスじゃないですか。女性でも男性でもない。仮に女性を演じていてもどちらでもない気がする。

玉三郎 女形って、自分が持ってる性(さが)を使えない。違う者になっていくお客様に失望させないようにしなくちゃいけない中で役からはみ出ないというか、主我が出ないというか。

演目の中で一番やった感のあるもの

玉三郎 ひとつの執念があってね、一人前の女形はこれだけの楽器を奏でなきゃいけないって思うとね、やらなきゃ気がすまない。そういうタチなんだと思います。できれば劇場にお客さまに来ていただいて、採算取るとか収入得るとか、たくさん来ないとできないとか考えずに、ただやっているほうが幸せだったんです、実は。

ユーミン 演目の中で一番やった感のあるものは?
玉三郎「政岡」大役なんですけど、それとか、忠臣蔵の九段目という大きな話の外側にいるお母さん。大役で、難しく、地味な役。出来た時にはやれてよかったと思いました。娘で、華やかで、恋をして、失恋してって役はやりやすいと思うんですけど、全くそうでない役
ユーミン 母性を感じる
玉三郎 実は母性はわからなかったの。ある先輩に、母性はどうやって出したらいいでしょうかと聞いたら「いや、母だと思わなくていいよ。恋人じゃない最愛のものだと考えればいいんだよ」
ユーミン いいこと言う方ですねえ
玉三郎 ああ、と思って、サッとできた

ユーミン 歌舞伎の舞台は、荒事はスペクタクルなものが多いですけども、そういう中の女形の役割は
玉三郎 寄り添って、女形も華でいなきゃいけないけども、貢献役なんですね
ユーミン 宝塚みたいですね

玉三郎 女形は決めていました。自分では。やっぱり美しいものが消えたりとか、全然違った夢のようなキャラクター、役柄を演じ、夢のように通り過ぎ、あの人私生活あるんだろうか、という人たちを見るのがすごく好きだったんですね

常に死を意識する

ユーミン ご幼少の頃に、お弱かったから舞踊を始めたとお聞きしたんですけれど。常に死を意識されてたと。大いに影響がありますよね

玉三郎 常にできなくなるんじゃないかという思いが、ちっちゃい頃からあった。お客様に見に来て良かった、夢のような時間を見ていただかなくちゃいけないので、自分が見てて「こういうのは見たくないな」ってものにはなりたくない気持ち。夢を壊しちゃいけないという気が、被害妄想的にあるんです。
ユーミン わかります。被害妄想との闘いのところはありますね
玉三郎 みんな、そんなことないでしょう、っていうけど、実は隠してるんです

ユーミン 玉三郎さんは孤高の美意識の持ち主で、いい意味で寄せ付けないオーラを
玉三郎 そんなことないんだけどね(笑)

ユーミン でも、こうじゃなきゃっていやっていうのは守り通されるでしょ?
玉三郎 そう言われてみればそうかな。ユーミンさんもそうかもしれないけど、華やかな舞台をお客様の前でやりながら、部屋に帰ってポツンってしてるときってない?
ユーミン ありますよ。決して嫌いじゃないんですよね
玉三郎 でも微妙なさみしさがありながら、また次のところへ行こうと作品を作ったりするので、なんかそんなことは楽しめないんだけど、そういう仕事なんだなって、つくづく思うんです

ユーミン 選ばれし者の孤独みたいなものに酔ったりするんです
玉三郎 酔わないで(笑)できれば孤独は避けたい
ユーミン 寂しさと孤独って違う気がするんです
玉三郎 ああ、そう。そういう意味だったら孤独は好んでいるかもしれない。寂しさだけは避けたい

ユーミン どちらにしろすごく高貴です。追随を許さない
玉三郎:そんなことないです。できる限り自宅ではトレーナーでいたい。ホントはトレーナーでいたい...下着が切れてきた(笑)お前の部屋で出しといて、みたいな時もあるんです...

常に挑み続ける理由

ユーミン いろいろなジャンルの舞台に挑戦されてますけど、好奇心からですか
玉三郎 そ、好奇心だけ。それとやっぱり、もう一つは声をかけていただいたことに対して、今までいろんな役をやってきたじゃないですか。自分で作ってきたということもあるけど、他人に作ってもらったらどうなれるだろう。素材になりきってみたいなあと。 
     
ユーミン 勝手に私の好きな時代とか絵画とか、玉三郎さんと重なっているところがすごくあるんじゃないかな
玉三郎 そうなんですってね。どこらへん?
ユーミン あのね、19世紀末とか、第二次大戦ぐらいのヨーロッパの雰囲気。シャンソンもお好きだってことで。レジスタンス運動の中の抑圧された灯火。愛とか、そういう世界もお好きな感じがしたんです
玉三郎 やっぱり抑圧されたりとか、叶わないところに愛の喜びと悲しみがあるのかな。叶ってしまうと愛が語れない気がする
ユーミン シャンソンの舞台とか、縛りの中での輝きがお好きなんだなと思いました
玉三郎:そうね、どこかの中にあったほうが好きかな。自分で考えたことはないけども
    

松任谷由実

玉三郎:どちらが先なんですか
ユーミン:だいたい、曲が先です。それに合う言葉やリズム。言葉にする前にその歌の世界感みたいなのを持ってるんですよ。だいたいこんな感じに行きたいなーっていいうのをカオスみたいに持ってて、それが実際に通訳するように歌詞になると、本当に快感になります。ステージに立つより、ずっと嬉しいです。世界中誰も知らないのに、自分の中でアイデアが孵化した瞬間は嬉しい。私の歌詞を書家の人が書いてたら、さんずいがすごく多いと言われて。「滲む」「流れる」「浮く」移り行くものが水に関係あるかもしれません。