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視点論点 夏の料理は五感で楽しむ ソウメンタシヤー 土井善晴(抜粋)

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アジアの食べ物

初めて私が外国に行った時、生水やアイスは絶対食べてはいけないよと,、まず言われたものです。外国では食あたりでお腹が痛くなることがあるからです。

いま、台湾旅行の楽しみはマンゴーのかき氷らしいですね。でもそれは最近のこと。
衛生管理に気をつけて、守ることで初めて楽しめる。
アジアでは本来、暑い夏だからこそ、温かいものを食べるのです。
油を使って高温で加熱した料理を好み、出来立ての熱々を食べる。
それが一番安心できるからです。
出来立てが美味しいからと考える以前の「安心」を優先することで、
食文化は生まれるのです。

ソーメンタシヤー

ですから日本でも、亜熱帯の沖縄では、冷やしそうめんより
油炒めにしたそうめんを好んで食べる。
それが「ソーメンタシヤー」=油炒めにしたそうめん
炒めそうめんが広まらないのは、
茹でるそうめんを炒めると、団子になって難しいから。
コツはそうめんの水切りをしすぎないこと。
そうめんの残った水を、うまく利用して、ほぐし炒める。
蒸気を利用して火を入れるとうまくできます。

日本における清潔なくらし

手を洗うことの重要性について

日本で冷たいものが安心して食べられるのは生来のキレイ好きによるからですね
衛生管理という技術を学ぶ以前に、習慣的に身に付いていたから。
夏でも冷たいものが当たり前に食べられることは
考えてみると「それってすごい」ことなんですね。
清潔なくらしとはどういうことか、すこし考えてみたいと思います。
家に戻れば一番に手を洗います。
お料理する前にも、ご飯を食べる前にも。
きれいにしてからくつろぐ。きれいにしてからごはんをたべるのです。
確かに、手を洗うと、スッキリ良い気持ちになるものです。
茶室に入る前や、神社でお参りする前に、必ず手水(ちょうず)を使います。
手を洗うことで気持ちを改めて、けじめをつけているのです。
外と内、過去と未来に境を引く。
それは、日本人の美意識として、建築や工芸などの鑑賞にも表れるのです。
毎日の食事で、箸を横に置くのも、日本だけの習慣。
箸は結界。「いただきます」の声で結界を解くのです。

「きれい」という言葉/真善美

私たちはきれいであることを尊重します。
きれいという言葉には、美しいだけでなく清潔という意味が含まれています。
さらに正直な仕事ぶりも「きれいな仕事をする」と言います。
嘘偽りのない真実。打算のない善良。濁りのない美しさ
「真善美」=真実・善良・美しさ。
そんな感性を日本人だけが持っている。

※番組の途中ですが
以前「真善美の探究」ってコメントを見かけたの思い出した。
(土井さんとは関係ない。)
anond.hatelabo.jp
本来の意味は読んで字のごとく。
プラトンによる提唱。土井さんは哲学書を愛読。
真善美(シンゼンビ)とは - コトバンク

さて、話をお料理に戻しましょう。

私たちは五感のすべてを使って、ものを食べています。
本当の日本料理は、舌で味わうばかりじゃありません。
味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚。
それぞれが感じる心地よさを楽しんで、さらにイマジネーションを膨らませ
心を涼やかにするのです。
和食は目で食べると言われるように、ひとめ見て涼しげな
薄手の白い磁器やガラスの鉢を選びます。
そこに笹やもみじといった青葉を添える。
よく冷えたガラスや雫を見ただけで、冷たさを感じられるのです。
ギンギンに冷えたビールや、フーフー熱い汁物。
冷たいものは冷たく、熱いものは熱いのが極意。

しかし、極端な冷たさは味覚を鈍らせることがあるように
ほどほどがたのしめるものです。
昔はスイカを井戸水で冷やしたものです。
ひんやりと感じるぐらいがちょうど良くて、甘さや香りがバランスよく
美味しく感じるもの。

夏の綺麗な音

できるだけ冷蔵庫に入れないで、蒸れない様に取りおきます。
ほどよく熟した桃を、氷水に浮かべてあげてください。
30分もすると、ちょうど良く冷えてきます。
綺麗な桃をつかもうと、冷たい水に手を入れると氷が動きます。
カラリと音を立てますでしょ。
食べる前に楽しさが既にあるわけです。
夏の心地よさは耳でも楽しめます。
薄手の磁器の茶碗がコチンとあたる音、薄物の着物が擦れる音。
綺麗な音は静けさを背景にした、かろやかなものです。
その音の正体は一体なんでしょう
とても微妙なものですが、耳ではとらえられないその心地よさは触覚でもあるのです。

麻の着物のシャリ感、ところてんのツルツルした感じ、口当たり。
かき氷を混ぜ合わせるスプーンのシャリシャリと音を立てる感じ。
触覚的気持ち良さを擬音で表現しているのです。

ジメジメという暑さを音で打ち消してくれる言葉が日本にはある。

嗅覚

匂いがすると、私たちは怪しみます。
いい匂いがすれば鼻を近づけ、嫌な臭いは遠ざける。
食べ物には何の匂いもないのが安心で清潔であることのあかし。
そこに青柚子やすだちのようなはかない香りを好むのです。
白い薄手の盛鉢を氷水で冷やし、酢にした魚をすっきりと盛る。
丁寧に青葉を添える。

大きなスイカを丸ごと下げて歩く土井さんの写真が出た。
目の粗いアミカゴに入れて。
「土井のおっちゃんがスイカ持ってきてくれた」皆喜んでくれる。
ザクザク切って大鉢に盛る。
皆、夏の笑顔になっています。