90年代の言語感覚
流行り言葉
宮沢:先週は死ぬかと思いました
風間:饒舌に喋ってたけど。誰に強制されたわけでもないのに
宮沢:最初に感じた流行り言葉は?
西田:中学生の時に「PK」って言葉がすごい流行って。それはその、まぁ、パンツがくい込んだ時にパンツを直すときに「PKだわ」
宮沢:それ、放送しないほうがいい(笑)
大原:中学校の時に、言葉の語尾に「~系」っていうのをよく使ってて「ねねね、大丈夫系?」とか一時期すごい使ってました。今全然ないけど
宮沢:帰り系とか
大原:「帰る系」
宮沢:生まれて最初に聞くのがお母さんの言葉、それから教師、途中から、それとは無縁な新しい言葉を発見する。音楽の歌詞だったり、或いは文学だったり、小説だったり。そういったものを通じて世界を見る。言語がどれだけ私たちを縛っているか。それを通じて世界と結びついている。
※BGM 岡村靖幸「だいすき」
伝染るんです/吉田戦車
揚げ足を取るって言うんじゃないですけど、別の異次元の何かを引き出せないかみたいなことは常に考えてた。単純な話、みんな電車の中でマンガ雑誌読んでる時代ですから、
受け入れられる幅が広かった。だから全然わかんないって人もいれば、スゲエおもしれえって言ってくれる人もいる。そういう意味では世の中に需要があったのは外せない。
ああいう意味のないものを面白がるのが、今よりあったという
そんな気はしていますけど。
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倉本美津留
い切る言葉
「長!」とか「遅!」とか。みんな普通に使うでしょ?いを取ることで、そんな一言で片付けられへんやろというのを集約する笑いになっちゃうんですよ。多分その言い方も、ごっつ、ダウンタウンから始まってんですよ。普通の会話の中に違和感を入れるんで、面白いのができていく。すっごい笑ってしまうんやけど、みんな当たり前やと、前からあった言葉のように使ってしまう。面白い言葉いっぱい使いたいなって言語感覚になっていったと思う。
宮沢:90年代にダウンタウンがもたらした影響はものすごく大きい。い切るっていう倉本君の言葉。あるときテリーさんの番組に行って企画を出したんですね。余りにも関西の言葉が笑いを席巻している。おそらく90年代の半ば。川崎あたりに車を停めて、関西人を返すという、東京に入れない企画。これは通りませんでした。
風間:差別ですね
宮沢:そう言われました。プロデューサーに。
ライティングスペース
(笑)→w →草
風間:言葉は言うものではない、見て書いていくものというのが今の流れ。
西田:パソコンで、見て書いて消していかないと無理。
宮沢:そこ大事。ライティングスペースっていう本があるんです。僕にとってはすごく役に立った。私たちの思考方法は直線的ではない。私たちの意識はデタラメで、いろんなことを思いつく。途中で別のものを思いつく。また元へ戻る。意識というのはそれぐらいデタラメ。コンピューターはもしかしたらこれが記録できるんじゃないか。頭に浮かんだ事を書いて、後で組み立てる。それが新しい考えとして書かれたかというと、そうじゃない。もっと前に書いたのが坂口安吾なんです。
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坂口安吾
文字と速力と文学
私の想念は電光のごとく流れ走っているのに
私の書く文字はたどたどしく遅い。
私が一字ずつ文字に突き当たっているうちに想念は停滞し、
戸惑いし、とみに正気を失って、あるときは消え失せたりする。
97年のパルコブックセンター
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映画から入って、同時に哲学や文学を知る上で
本当に最大の影響を受けたのは、つい先日三島賞を受賞されました
蓮實重彦さん。
お書きになられてるようなのは、批評の中に引用が普通になされている
他人の文章がそのまま入ってきていて
そういう文章の組み立てに関して、僕はすごく面白さを感じた。
一つの物語のようになっている。
ここ30年の間に高度情報化社会ってことが盛んに言われていますが、
その中でなおも文章を書く。
人は本当に自分の文章を書けているのだろうか。
そもそも我々はほとんどの語彙を辞書から借り受けて
それを組み合わせて発言したり文章を書いたりしているわけですから、
ますます小説を書くというよりは
組み合わせているという作業に近いんじゃないかな。