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メモ代わり。ジャンルも気まぐれ

【メモ】久米書店 悪の力 姜尚中 殺人事件、イスラム国、夏目漱石

19歳女子学生による77歳老女殺人事件(2015)

人を殺してみたかった

久米:悪というより、あまりにも異質で。
   言葉は似てるけど「悪魔」と言った方が近い。
姜尚中:彼女は名古屋大学に入ってますから。家庭的にはとてもいい。
    小さい頃から異常行動には気づいてたけど、
    頭も良くて素直だった。19歳の、大人にもなりきれてない人が
    なぜこんな異常行動を起こしたのか。
    去年少年Aの本も出ましたよね。
    そういうこともあって、僕自身はひとつじっくり考えるべき、
    手がかりになるんじゃないかと思った。
    彼女は殺したおばあちゃんの遺体と一夜を共にした。
    普通はどこかに遠ざけるか、遺棄するか。
    彼女は被害者が物質にしか見えなかったのではないか。
    ということは、自分の体も自分の身体と思えない。
    他人の体も、生きてるのかモノなのか確かめたいと。
    身体感覚に照準を合わせて考えてみたい。
久米:「身体性」がひとつのキーワード。
姜尚中:小さい頃、カエルやアオダイショウをよってたかって血が出るぐらい騒いで。
    その時結構エキサイトするわけです。怖いという感覚もどっかにあったと思う。
    そういうナマの体験がどんどん無くなった時に、
    脳だけで処理をしてしまう。
    自分の身体は自分を制約するだけのモノにしか見えなくなるのではないか。

読んだ気になるポイント

憧れる

久米:お若い時悪に憧れた、そういうことなかったですか?
姜尚中:ありました。
久米:僕は映画少年でしたから。時代劇は勧善懲悪。
   子供ですから正義の味方の味方。月形龍之介さんのファンでした。
姜尚中:それより若いと、成田三樹夫さん。似てますよね。
久米:よく言われました。


SUNTORY 生樽 田中好子&貴乃花&成田三樹夫 取っ手がつくと篇1982

姜尚中:自分の欺瞞とか偽善とか、日常の小市民的にやってることを
    引っペがしてくれる。自信を持って生きてるふうに見えたんですね。
    頭の中でやってみてもなかなかできない。
    悪は境界領域を超えて、私たちの常識を覆してくれる力に憧れる。
久米:悪と悪でないものの境目がよくわからなくなってますから。
姜尚中:9.11以後、例えばイスラム国のような
    書いた時点ではそんな大きなことになると思っていなかった。
    ああいう「絶対悪」とそれに対峙する世界。
久米:この本にも書いてますけど、イスラム国でイスラム教に帰依した連中は、少しはいるでしょう。
   ほとんどの人たちはPRビデオを見たりして「面白いじゃん」と
   世界中からリクルートされた人間。
   で、イスラム国に入って戦士になってる。彼らから見たら全てが敵。
   殺したら全てがクリアに見える。ある意味羨ましいほどクリアな世界。
   誤解を呼ぶといけませんけど、魅力がありますよね。
姜尚中:今の若者たちの不運な中に、そういう一本釣りに惹かれる人はいるでしょうね。
久米:アメリカンドリームに憧れて、ウォール街でホームレスになってる人。
   繁栄の陰で食うものにも困って若い人が過ごしていたとすると
   格差社会の世界からイスラム国に行ったとすると
   どれだけ気持ちがスッキリするかと、僕考えたんですよ。
   すべてがわかりやすい。イスラム国以外の奴を殺せばいいんだから。
   複雑で頭ん中ワケわかんなくなったものが、ぴやっとわかって
   視界明瞭になるのが魅力かもしれませんね。
姜尚中オルタナティブ(代替手段)があるんじゃないか。
    イスラムだけが完全な他者、異物。
    そこに準拠する人が居るとすると、非常にわかりやすい。

ネットよりリアル書店で売れる本。
表紙、著者近影が多いですね。
本書を包み込む不穏な影。

悪の力 (集英社新書)

悪の力 (集英社新書)

蔓延る(はびこる)

久米:イスラム国がオウム真理教とダブる。
姜尚中:この国は戦後民主主義があって、ある程度多様性、最大公約数があった。
    それを根底から覆すようなことがあると、
    やっぱりここで立ち止まって、わたしたちの社会はどういう良さを持ってきたか
    リトマス紙として悪があると思った。
    自分たちはどれぐらい悪に許容できるのか、
    度量を試されてると思う。暴力で立ち向かうとか
    選別しちゃえ、やっちゃえとかこいつら絶対悪だとか
    9.11で、アメリカ人ですら度量がないのがわかった。
    日本でも悪に対してどういう風に向き合ったら良いか
    そもそも悪はなぜ無くならないか
    悪に対してどういう風に向き合ったらいいか考えたんですね。 

久米:悪とは何であるか突き詰めようというお気持ちと
   悪には勝たなければならないと。
姜尚中;学生に「これから愛について語りましょう」と言っても
    みんなしら~っとしてるんですよ(笑)
    頭の中がお花畑って目で見てるけど
    「悪について語りましょう」と言うと見てくれる。
    つまり悪の方がリアリティがある。

壇蜜:悪は自分だけではわからないところにある。
   愛は手の届くところにある。
久米:悪には強力な引力がある。
壇蜜:だから先を生きる人に教えて欲しいんですよ。
久米:手を染める悪もあるけど、自分では気づかないうちにやってる悪もある。 
   悪は度合いが無限にある。  

姜尚中ホロコーストは人類のためになると思ってやった。
    愛するが故に悪をやってしまった。
久米:ユダヤは全部殺すんだって、なんの生産性もないことを
   大変な時間をかけてやった。
姜尚中:名古屋の女子学生にしても、殺すこと自体が自己目的化してる。
    70年ちょっと前までそういうことをする人がいたわけですから
    空前絶後の異様な事件とは言えないのではないか
    目的が人を殺めること、それ自体。
    虚しさを埋める。生きてる実感がつかめない。

猫である

久米:夏目漱石さんが50で亡くなったって、僕らよく話すんですけど、
   あれ、数えなんですね。数え年50
姜尚中:この人が何故重要か。簡単に言えば、インフレの時は福沢諭吉なんです。
    デフレは成長が止まり、内省的になる。
    そういう時は夏目漱石なんですね。

久米:あの人もお札になってますけどね。
姜尚中:今で言うと極度の躁鬱だったんです。
    母の愛情も知らない。間違いで生まれてきたと一生思ってた。
    僕自身も、なぜ日本に生まれてきたんだろうと思春期迷いましたから。
    彼は今で言うグローバル化が進めば人間は不幸になる、と思った人だと思う。
久米:どの程度彼の頭にグローバル化があったかわかりませんが
姜尚中:イギリスに2年いましたし、その後パリ万博もあって彼は間違いなく
    謳歌していた。
久米:この本の結びにもあるんですけど「真実は日常にある」と
姜尚中:彼が書いたのは国家ではなく「世間」「友人」
    でも明治国家のエッセンスが全部入ってる。今考える限りは真理。
    日本でなぜ自民党が付いたかというと、世間を牛耳っていたから。
    村のお祭りがあれば挨拶回りをするし
    残念ながら戦後の革新的な政党が、これをやってこなかった。
    

悪の力 (集英社新書)

悪の力 (集英社新書)

記事にするかどうするか今回は迷ったけど
書きたい気持ちが勝ってしまった。

おまけ

2015年新書ランキング

※嫌いな人は絶対手に取らない本がズラリ

1.家族という病 下重暁子
2.人間の分際  曽野綾子 
3.新戦争論   池上彰
4.大放言    百田尚樹
5.感情的にならない本 和田秀樹
6.おとなの教養 池上彰
7.「自分」の壁 養老孟司
8.下流老人 藤田孝典
9.地方消滅 増田寛也
10.「ドイツ帝国」が世界を破滅させる エマニュエル・トッド

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