2014年7月16日放送「知恵泉」
知恵泉:向田邦子 これが私の選ぶ道。筒井ともみ 諏訪貴子 - 別館.net.amigo
不慮の飛行機事故で亡くなって33年。これまで絶版はない。代表作は毎年増刷を重ねる。残した作品はおよそ3500本。今も命日にはお墓にファンからの花が絶えない。
高校入試に「父の詫び状」が出題された。83年だった。今でも読書感想文の課題図書になっている学校があるらしい。「寺内貫太郎一家」以上に暴君で、昔堅気というよりも近寄りがたい父親像を演じ続けた一人の男。14歳から15歳にかけての自分はそう解釈しながら読んでいた。もともと国語は得意だったので、受験勉強はせず向田邦子ばかり図書館で借りていた。しかし男ってちょっと病気すると大げさに弱くなるよね。今も昔も。番組中紹介されたエッセー「ねずみ花火」は新装版 父の詫び状に収録。
向田邦子テレビドラマ全仕事 完全版 (TOKYO NEWS MOOK 241)
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徹子:一番最初に向田さんと会って、すぐ話したのが「人生あざなえる縄のごとし」これどういう意味なのって聞いたのね。「人生は 幸せという鏡と不幸せという鏡、2本でね、編んであるようなものなのよ」幸せと不幸は交互にやってくるもの。そういうものが人生というものなの。本当に 向田さんそう言ったんだけど、いいことと悪いこと 本当に交互に来るなあって。
一筋縄ではいかない家族が「寺内貫太郎一家」
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今年みたいな暑い夏だったか、上は大体白ですけれども スラックスも白。真っ白い恰好で向田さんのところへ伺ったことがあるんですよ。「あなた それ 奥さん大変なのよ。 あなたもっと考えてあげなさいよ。」
男がそういうのを着た時に 家庭ではどんなに大変な手入れをしているかというのがさあっと浮かんできて そういう言葉になったと思うんですね。自分で格好いいと思ってそんな白1色でね。颯爽と涼しげに歩いていたって その陰には大変な苦労をしている人がいるのよ、ということだと思うんですね。「手袋をさがす」も模試か何かで出題された記憶がある。国語の解答なんてひとそれぞれ違うのに、窮屈な回答欄にむりやり(正答と思われるものを)書かないといけない。
是枝裕和
「決してきれい事では済まない関係が家族の本質であると考える。単純な「家族至上主義」とは違う。家族同士でも闇や謎は抱えているし、家族だから理解しあえるというような信仰に基づかないリアルな家族描写がある。本来は血縁を超えて人と人とがつながってくる。ひとつじゃないじゃん、っていう価値観が大事になってくる。彼女が描いた家族が一番面倒くさくてやっかいで、いちばん隠し事が言えない相手である。でも一緒に暮らしているという描写の方が逆にほっとする。だから読みたくなる
澤地久枝
思いあぐねることがあると 必ず「向田さん あなたならどうする」と尋ねる。答えは来ないけど。私がいつもそうして呼び起こしてる感じ。向田さんの作品の特徴を一つ言うなら「翳り(かげり)」それは悲しみでもある。ないひとはないけれど、翳りはとっても大事。昭和の時代の長女として 父親のことはもちろん考えたし、妹や弟をあんなに愛しんだ人はいない。今、日本語は若い人、大人も含めて酷く乱れている。向田さんの作品には非常に美しい昭和のちゃんとした人たちの言葉がある。それは驚きだろうと思う。人生の上での陰りがあると私は思う。作家としてこれからの時に死んでしまった。あの頃には許されない恋愛をして傷ついていますが、心の中に大事に持って、末っ子が疎開する時にはがきをいっぱい持たせて「毎日出しなさいよ」と言っている。疎開は楽しいことばかりじゃないから字がだんだん小さくなる。それを感じ取る感性がある。多くの人の心を打つものだと思う。
自身は結婚しないし家族を持たないけど、元の家族はとても大事にした。父の勤務で行った鹿児島もいとおしんでいた。あんなに家族をいとおしんだ人はいない。
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