隈研吾
歌舞伎座の話
歌舞伎座の、外見を同じにして中をどう変えたか。
座席数を60ほど減らし、1808席。傾斜を工夫し3階席からも見えるようにした。
「歌舞伎座を壊さないで」という感じが空気中に漂っていた。新しい劇場なのに、練れてる、暖まってる感じ。新鮮な既視感があった。見たことがあるけど、新しい違う感じ。
新鮮な既視感っていい言葉だね。初めて聞いた。こうやったほうが(椅子が)気持ちいいとかやっていくと磨かれていく感じ。オペラ座の垂直な空間。小さな変更を積み重ねて磨き上げて、「なにか新しい」ことがあった。
10分の1サイズの模型で音響実験, 音響反射板。
いろんな要望を模型で作ってるころはつらかった。方向性が確定してない時。途中から面白くなってきた。発見がたくさんあるわけよ。古いカーペットの下から、昔のカーペットの破片が出てくるわけよ。あ、こんな色だったんだ、とわかる。壁とか柱をすっていくと、何回も塗りなおしてるプロセスがわかる。今のやつは結構あったかい黄色っぽい色なんだけど、じゃ、どの色に合わせようかって話になるのよ。排気ガスとかあってさ、塗りなおしも何回かあるからすごく色が濃くなってる。
そのまま塗ったら、林さんが見たら「新しい既視感」はなかったと思う。最後まで擦りまくった奥の色が真っ白だとそれも違う。中間色の白の中でどの色を狙うかって、30mの外壁をベニヤでそのまま作ったのね。
ベニヤの壁にいろんな白を塗って、下から見上げて。
白は空を反射するから、空との合成で色が決まる。そうやってこの白が歌舞伎座の白だってのにたどり着いた。面白かった。ケイ素の粉体を吹き付けてるから、表面がマットでいい感じのつや消しになる。雨が降ると自動的に汚れが落ちる。だから質感が出せる。わざわざ歌舞伎座のシンボル、唐破風から入ることにこだわったんだよねえ。
東京、北京、パリに150人のスタッフ。同時に動いているプロジェクトは全部で70。
立ち話の打ち合わせが多い。スケッチを描いて渡すとスタッフがそれに縛られるので。スケッチは今までやってきたことの繰り返し。僕は繰り返したくないのでディスカッションで。
この人間面白いとなると、仕事がメールで直接来る時代。時差は慣れですね。短期間の中で眠れるから大丈夫。肩掛けかばんだけ。下着とTシャツだけ持っていけば2週間大丈夫。建築家の特権でさ、服装大目に見てくれるんで得してる。気取りすぎてるのっておかしいじゃない。
日本人は建築家に向いている?
そもそも三次元の形をオタク的に作るのは日本人得意。日本の建築家が世界市場の大半を占めている。明らかに日本人が上手なんだよ。即日設計(12時間で課題の建物を1つ設計)できるし。アメリカ人はしゃべるけどできない。日本人だけだよ。質感把握、全体のバランスで把握するのも得意。日本人はモノと対話ができる能力に長けてるんだ。「控えめの中に味がある」のが得意。新国立競技場を手がけたサハ・ハディド(イラク人建築家)はワーッとしたのが得意。
「京都の町並みは素晴らしいけど、これを壊して新しいのを作りたい」と思うか.
僕は思わない。ぶっ壊さないで作るのが好き。建築学科の学生の作品は暗い。地面を這い蹲ったような感じが多い。世界中でこんな暗い絵を描いてるのはここだけだ。はいつくばった感性を大きな建築物に生かしたい。「いまさら建築で」という空気がある。得意な能力を発揮できる場所が国内から減っているのはもったいない。
林真理子
執筆部屋、独身の頃(86年~87年「20代で有名になる方法」anan)に載ってたのと同じ。
中園ミホ:新幹線に一緒に乗って、原稿用紙をばさっとめくった瞬間空気が張り詰めて。1秒も手を止めずに書き始めた。
それまで芸能人のバカ話とかしてたのに、その集中力。小説を書くために生まれてきたんだと圧倒された
自称作家は、書くのがつらいって言うけど、書き始めると止まらなくなる。指が勝手に動く。あの感覚が得られない人は職業作家になれない。何十冊も書いてる人にはその感覚がある。集中力がないと作家になれない。
ananでおなじみ、編集者のテツオこと、鉄尾周一サンが登場「有名になりたい、恋愛したい、家を建てたい、子供がほしい」を叶えていった。実現力が林真理子の最たる魅力だといってましたね。
作家はどこか病んでないと書けない。それを健康な肉体に宿らせるのが一種の技術。着地はしっかりしてて、妄想や想像の中でいろんなことをしていくのが好きなスタンス。